FINAL-PHASE Promised Land



かくして、時代に翻弄された二人の男女の物語は終焉を迎えた。

だが未だ語るべき事柄は残されている。


後に残された者達。


同じく歴史のうねりの影に消えていった悲劇の形成者達を思うも良かろう。

運命に弄ばれた喜劇役者の終焉を笑うも良かろう。


降りしきる雨は次第にしとしととその勢いを失い、雲間からは控えめに顔を出す太陽が覗いても。

未だ女神の涙は拭い去られる事は無く。


ならば語ろう。


約束の地へと導かれし者達の最後の輝きを。



*****



「とんだ茶番であったな。」


そう呟き、怒りを露にしたレスタト・タウンゼントの眼には、既にモニターに映し出される光景に対する興味は一分も残っては居ない。



「おや? そうですかぁ? 割かし面白い見世物だったと個人的には思いますけどねぇ。ひひひひひひ。」

ジョーカーの甲高い笑い声。


「私は映画の類を見に来た訳ではない。

研究の成果を確認に来ただけだ。面白いかどうか等、どうでも宜しい。」



冷淡に突き返すレスタトに、ダレス・パレッツォがやや涙混じりの横槍を入れる。


「んもう、冷たいのねぇ。アタシはあの子達のやり取り聞いてたら、何かこう、感情移入しちゃったわよ? グスッ。」


「科学者にあるまじき感傷だな、パレッツォ博士。」


「いーじゃないのぉ。そーゆー人間味溢れる科学者が居ても。

感情の爆発は、時には予想も出来ない化学反応ケミストリィを引き起こすのよん。」



ダレスの言葉をレスタトは鼻で笑い返す。


「ふん。それは結構な事だが。君は怒りを感じないのか?

博士原案の傑作機、パラディオンは見ての通り、物の価値の解らぬ愚物どもの所為で永遠に失われたのだぞ。

ラガン達が死んだ今、図面も既に失われて残ってはおるまい。」


「ん? ああ、そんなのどーでもいーのよ。

壊れたモノはまた作れば良いだけ。

勿論同じものを作るのではなく、問題点を改良して、ね。

図面? 図面ならココにあるじゃないのぉ?

失われる事は無いわよ。アタシのオツムがどうにか成らない限りは、ねえ。おほほほほ。」


そう言って自らの頭部を人差し指でコンコンと叩くダレス。



「成る程。流石は”十三使徒”とでも言っておくとしようか。


だが、私は君ほど達観も出来ないし、寛大でもない。

人生には限りがあり、時間は決して無限ではないのだ。


あの”万象の杖”を一から作り直すのに、一体どれ程の時間を要すると思っている?


時は金なりタイムイズマネー、だよ、パレッツォ。


だから、時間を無駄にする事しか出来ぬ愚物どもとは関わりたく無いのだ。

もうこれ以上、連合の愚物どもの手に我が研究の成果を任せる訳にはいかなくなった、な。

私はもう二度と、”強化人間”の研究には関わらん。


折角”完成体”を作ってやったにも関わらず、この体たらく。

奴とあのガードナーという男との戦闘を見たであろう?

”万象の杖”はあの程度では留まらず、まだまだ進化する余地すらあったというのに・・・・・


ああ、腹ただしい。

もうアレ以上の物を作り出す事も出来ないし、やろうとする情熱も起こらん。


だからもう止めだ。”強化人間”の研究にはもう飽いた。


後は勝手にやるが良いさ。

愚物は愚物らしく、私の研究の残りカスでも食らいながら、な。」



レスタトはかなり興奮気味の様だ。

辛辣な言葉を吐きながら、常に紳士的な態度は崩さなかったこの男らしからぬ態度である。


故に、ダレスはやや遠慮がちに彼に声をかける。


「もう止める、ってアナタ、一体どうする心算よ?

プラントにでも渡って違う研究をはじめる気?

そんなの無理よ。

連合軍がかの天才”レスタト・タウンゼント”を手放そうとする筈が無いでしょ?


亡命でもしない限り・・・・・・」


そこまで言い放って、ダレスははっと息を呑む。


「ちょと、タウンゼント博士? アナタまさか・・・・」



「そのまさか、さ。

まあ、敵対国であるプラントに渡るのは現実的に無理だとしても。

オーブになら、渡る事も可能だろうな。

表向きは連合の属国の様な国だが・・・・・・”永世中立国家”の名は伊達ではない。

連合の目から逃れ、亡命者を匿ってくれる勢力も幾つか知っている。


そいつらは皆、こぞって私の話を聞きたがるだろうよ。

”強化人間研究を完成させた”私の話をな。


ふん、人間の野心に制約はかけられない、という訳さ。

これで続けられるな。


”人類の進化”の研究を。」



レスタトの両目に宿るは野望の灯火。


ダレスはそれを見て息を飲む。


「そ、そんな簡単に・・・・・近所のコンビニに行ってくるみたいな調子で言ってるけど、それは紛れも無く”亡命”よ?

特例が認められてるアタシ達と違って、軍の最重要機密に関わってしまったアナタが、簡単に他の国に渡るなんて出来っこないわよ?」


「出来るさ。造作も無く。

くくく、そうだろ、”道化師ジョーカー”。君にならば。」


二人のやり取りを、薄気味の悪い笑みを浮かべながら見守っていたジョーカーが、その言葉を受けて恭しく頭を下げる。


「はい、はい。やってのけますよ? それに見合う対価さえ頂ければ。

地の果てまでも、貴方を連れて行って差し上げましょう、レスタト博士。ひひひひひ。」



レスタトは口元を歪ませて笑い返す。


「確か・・・・・・プラントから”ムスカディオ”を逃がしたのも君だったな?

ああ、向こうに居るあの狂科学者に伝えておくれ。


『もう直ぐそちらに行く。例の申し出、結果的に受けることになりそうだ。

共に人類の叡智を探し当てよう。我が友よ。』と。


・・・・・ふふふ。私は”バージェス”とは違って少しは頭の柔らかい人間なのだよ。

例の計画も、最初からムスカディオにもう少し他人への頭の下げ方が解っていたなら、名を連ねても良いと思うほど、面白そうな代物だったしな。


ああ、後、君の主人にも伝えて置いてくれ。


『君にとっての救世主メサイアは舞い降りたのか?』とな。」



そして再び、レスタトはダレスの方に顔を向け、名残惜しそうに呟く。


「さて、しばしのお別れだな、パレッツォ。

少々寂しい気もするが。

君は他の愚物どもとは違って、中々面白い男だったよ。


そして、プレスティのお嬢さんにも宜しくな。

彼女は結局、私からのディナーの誘いを一度も受けてはくれなかった。


それだけが気がかりだよ、ふふふ。

オーブに来る事があったら、何時でも付き合う、と伝えておくれ。」



この日を境に、地球連合に於いて天才医学博士の名を欲しいままにした、Dr.レスタト・タウンゼントは公的な記録から忽然とその姿を消した。

以降、彼の名前がC.E.の正史に登場する事は無い。


同じ医師でありながら、最期まで患者の為に尽くし、愛に殉じたアダムス・スティングレイとは対照的に、この先のレスタトが歩むは求道の道。

そして修羅の道。

自らの研究に全てを捧げ、成果を求め続けた彼の末路が語られるのは、もう少し後の話になる。


彼もまた、運命の神に翻弄された犠牲者であり、時代の裏側を埋める1ピースに過ぎ無いのである。



*****



累々と積み重ねられたダガーの残骸の上に、一体の異形のMSが悠然と立ち尽くしている。


白い骸骨の様な不気味な風貌。

必要最低限度の骨組み以外を全て削ぎ取ったようなそのフォルム。


李飛鳳リィ・フェィフォンの乗機、イクリプスダガー1号機である。


瞬く間に戦場に現れ、残存する強化人間部隊を制圧した彼は、彼の同士であり、また彼自身にMSの扱い方を教えた師とも言うべき男の姿を探す。


彼は両腕を失い、呆けたように地に膝を着く5号機を発見し、通信を入れる。



「・・・・・・何とも無様なものだな。”壊し屋”ガードナーとも在ろう者が。

油断か? 相手の強さが予想以上だったのか? ・・・・・それともお得意の感傷か?

ロバート。」


相手の安否を問う事も無く、リィは吐き捨てるようにそう言い放つ。

馴れ合いの感情など、この男には備わっては居ない。


だが、機体の中に居る筈のガードナーからは何のレスポンスも返って来ない。


「貴様の情けない敗北を目の当りにして、堪らずに飛び出して来てしまったわ。

よもや文句は言うまい? 

先ほどまではこれでも貴様の腕を信頼していたのだ。

だから団長の命令通り、大人しく全てを任せる心算だったものを。


フン。あんな小僧如きに遅れをとりおって。

”団長補佐”の名が泣くわ。


矢張り、寄る年波には勝てんのか?


もう引退して畑でも耕して暮らしたらどうだ、ロバート。


・・・・・オイ、聞いているのか? ロバート!」


苛立ち、荒々しい口調で問いかけるリィ。


比類なき剛の者と目されていたロバート・ガードナーの敗北は、彼にとっても大きなショックだった様だ。

当然の事かも知れない。

団長たるチャンドラからすらも一目置かれる存在であり、心の何処かに超えるべき目標の一つとして畏敬の念を感じていたのだから。


そのガードナーがターゲットに敗北した上に、強化人間の実験体如きに邪魔をされて任務に失敗した。

モニター越しに戦況を見守るだけであったリィには、そうとしか捉える事は出来なかった。


故にその鬱憤を晴らすが如く、搬送させておいた自分の愛機に乗り込み、ガードナーを倒したあの”女神像”と赤いダガーを打ち砕かん、と出陣したのだが・・・


戦場に到着した時、”女神像パラディオン”は既に自ら破壊への道を選んだ後であり、ブラドのダガーは、相方のクリスのダガーと共に、機能を停止して動かなくなっていた。

やり場の無い怒りと戦闘への渇望を、残り物の強化人間如きにぶつけた所で詮無き事である。

死に損ないのダガーを何十体葬っても決して満たされるとは思えなかった。



「・・・・・・・くれてやんよ。」


ガードナー機からボソボソと呟くような返信が返って来る。


「・・・・・何? 今、何と言った?」



「”団長補佐”の地位、欲しけりゃ手前ェにくれてやる、って言ってんだよ飛鳳。

ああ、手前ェの言う通りさ。

俺ァどうしようもなく錆びちまったみてェだ。


・・・・・・・なァにが、”任せる”だ。”男の約束”だ。畜生。

自分じゃ何にも出来ねェガキどもに、結局、辛い役目全部任せて、俺は何やってんだ。

畜生、畜生ォ!」



突如、声を張り上げるガードナーに怪訝そうにリィは呟く。


「? おい、何を言っている。俺に解るように話せ。」



「ガキどもを力付くで連れ戻すこともできねェで、手前ェだけのうのうと生き延びて・・・・・

死ぬのは一番歳食ってる俺だけで良かったんだ!!


あいつらが死ぬ必要なんざこれっぽっちも無かったんだ!!

腕ぶった切られたって構わずにあの赤毛止めて、俺一人が特攻でも何でもして、奴等を止めりゃあ良かったんだ・・・・

まだコイツが動いてるうちによォ!!」


ガードナーは事の成り行きの一部始終を見守っていた。

唯見守っているだけだったのは、ブラドとの”約束”を守る為、という部分が大きいが、何よりも彼の機体自体に限界が来ていた所為である。


”トロイア”による裂傷は、機体の運動制御システムをズタズタに切り裂いていたのである。

故にブラドとの会話後、程なくして5号機は動きを止めた。


ブラドに止められるまでも無く、彼はあそこでパラディオンを追撃する事は適わなかったのである。


しかし通信機能だけは生きている。

戦場での彼らの会話は、状況を把握しようとした彼の耳に全て入っていた。

それが尚更、彼らを助けたくても介入できない彼の無力感を加速させた。


むざむざと、若い命が散っていくのを見守るしか無かったのである。




「落ち着け、ロバート。貴様らしくも無い。


・・・感傷で物事を語るな。

その甘さは、貴様の唯一にして最大の弱点だぞ。

自分でも自覚してるのだろうがな。」



ガードナーの予想外の反応に面食らったように、リィが声を声をかける。



「・・・・・ああ、解ってンよ。

俺にゃ非情に徹する事は出来ねェ。・・・・・おまけに力も無ェ。

結局、俺にゃ、チャンドラを補佐する資格も、偉そうにふんぞり返ってる道理も無ェ、ってことだ。


だから言っただろ? くれてやる、後は任せる、ってな。

・・・・・手前ェの腕はとっくに俺を超えてる。

手前が気付いてるかどうかは知らねェけどな。



・・・・・・だが、引退はしねェ。

前線から逃げる訳にゃいかねェ。

手前が言ったみたいに畑を耕して老後をのうのうと過ごすには、俺は血を流しすぎたみてェだ。


戦って、戦って、ボロ雑巾みたいになるまで戦って朽ち果てる。

それが俺に相応しい死に様だ。


そうでもしなきゃ、フェアじゃねえだろ?


あいつ等に申し訳が立たねェだろ?


”壊し屋”はどうやったって救済者にはなれねェ。


唯壊すだけだ。今までも、これからも・・・・な。」



ロバート・ガードナーは、常に”へカトンケイル”の最前線に立ち、チャンドラの盾として、剣として一時も休む事無く戦い続けた、と後世の歴史家は語る。


彼はこれより1年半の後、圧倒的多数の敵を相手取り、武蔵坊弁慶もかくや、とも言うべき壮絶な討ち死にを果たす。

時代の尖兵として。一人の戦士として。武人として。

それを語るのはまた別の機会を待たせて頂く事となるが。


最期まで戦いに明け暮れた”壊し屋”の一生は、この時散っていった若い命たちに対する贖罪だったのではないか?

時代を紐解き、そういう解釈をする歴史家達も増えてきているそうだ。


今となっては、彼の心中を完全に知るべき方法は無いが、この心優しき剛の者の生涯は、例え血に塗れても輝きを失う事は無い、とだけ付け加えて彼を中心軸に据えた挿話を終わらせる事にしよう。

英雄の生涯を、陳腐な言葉のみによって語り尽くす事は不可能なのだから。



*****



さて、前述の李飛鳳が、ガードナーと対峙した時点から、少しだけ時計の針を逆向きに戻す事になるが・・・



リィが、ブラドとクリスの赤と青のダガーの残骸を発見した時。

ターゲットであるパラディオンを破壊せしめた張本人である彼ら自身は、その足元に”泣き崩れていた”という。


この事態は、如何にも奇妙なものであるように彼には感じ取れた。


”強化人間”は感情を持たない人形細工、という予備知識を与えられていたからである。


アダムス・スティングレイがその短い生涯を通じて、彼らに取り戻させた”哀しみ”の感情。


二人の試験体の視線の先には、お互いの身体を抱き合う一対の男女の亡骸が在った。


林の木々に絡みつくようにして半壊している黄色のダガーのコックピットから、零れ落ちるようにして落下した、アダムスとエヴァの遺体だった。

落下の衝撃に際しても、その手を離さぬ程に、きつくお互いの体を抱きしめ合っていたのであろう。


既にその魂は天に召された後であったというのに。



リィは理解するに至る。


この”強化人間”達のの感情を人間のそれと同等であると仮定した場合。


恐らくは報告にあったこの医師と、その腕に抱かれた試験体の少女と、この二人の間には家族の様な絆が芽生えていた。

即ち、近しい存在であるこの男女の遺体を目の当たりにした時、二人の強化人間の闘争心と逃亡の意志は完全に消え失せ、二人をこの場に幼児のように泣き崩れさせた。


最早、警戒する必要もあるまい。


彼らの戦闘意欲は完全に消え失せているのだから。


見事にターゲットを破壊し、ロバート・ガードナーと対等以上の腕を見せたこの試験体達と、”死合って”みたいという気が無い事も無いが・・・

今は任務を優先させよう。

それに肝心の相手がこの状態では、納得の行く戦いは出来ないだろう。



リィは遅れて到着した部下達に、アダムスとエヴァの亡骸の回収と、生き残った強化人間二人の捕縛を命じ、引き続きガードナーの捜索を開始する事にした。



ちらりとクリスとブラドを一瞥し、リィはこう思い至る。


恐らく、こやつ等はこの先、再び記憶を初期化され、まっさらな状態で新しい記憶を洗われた脳髄に植付けられる。

今日の日の事など、綺麗さっぱり忘れ去り、廃棄されるか、戦うだけの日々に投入される。



同情の念を覚えた訳ではない。

だが、泣き続ける彼らを見ていると、どうしてもこう感じてしまうのだ。


この人形共は、唯運命の手繰る糸によって生かされているだけの大多数の人間共に比べれば、遥かに”人間”らしい、と。


生きるに値しない人間が闊歩するこのご時世に於いて、人形風情がその境地に至るとは、天晴な事ではないか、と。


灰燼と為したこの大地の跡にも、確かに芽吹く新たな種は存在する。


使えるのならば、生かしておいて損は無い。


だからしばしの間、この者達は生かされ続けるのだろう。

だが、生かしておくだけで飼い殺されるのは、一思いに殺されるのとどちらが救いの無い生なのだろうか?


・・・”無情”也。



・・・だが自分には全く関わり無き事象故に。


リィ・フェイフォンは踵を返してこの場から立ち去る事を決めた。


ブラド・バルバドス、クリス・レラージュ、か。


せめてその名を記憶の片隅に留めて置く事としよう。


力が有れば生き残り、力が無ければ死ぬ。

弱肉強食。

こやつ等に生き残る力が有れば、もしかしたら運命の廻り合わせによって、一度刃を交える事も有るかも知れない。


それもまた、一興、か。



人間は限りある人生の中で、何人の強敵に廻り合うことが出来るだろう。

己の魂を削り合いながら、それでも戦いたいと願える相手。


それは恐らく、後ろを預けられる程に信頼できる友を探す事にも似て。

決して容易に成し遂げられる事ではない。


どちらも同じく難解な事柄。


死んだときに心から涙を捧げられるのは、きっとそんな存在なのだろう。




*****




”ラガン事変”。

醜悪なる”身内の争い”。



連合軍の報告書にそう記される事となったあの一件より、一ヶ月の時が過ぎ去った頃。


近々取り壊される事となった、この強化人間研究所の灰色の廊下を、威風堂々と闊歩する一人の男がいる。


歳の頃は30代半ば。

中肉中背では有るが、その風体には数々の戦場を渡り歩いてきた歴戦の勇士の風格が携わっている。

この男の風貌で最も特徴的なのは、まるで目が合っただけで石に変わってしまう神話の怪物の如き鋭い双眸と眼光。


戦場を体験してきた者ならば、それは一目見ただけで解るであろう。

只者では無い、と。



すれ違う研究所の職員や警備兵達は皆一様にして、何処か生気の無い表情をしている。

当然といえば当然である。


廃棄される事の決まったこの研究所に、この期に及んでも残っているのは、次の職が決まっていない者達ばかり。

取り潰されるまでの間、今までの仕事を繰り返す事以外にする事も無く。

それでやる気が起こる筈も無い。



「・・・ふん、これではどちらが”人形”なのか解らんな。」

男はそう一人ごちて、警備兵の一人にやや荒っぽく声をかける。



「おい、そこの。欠伸などしている暇が有るなら、早々にここの責任者を連れて来い。」


だるそうに腕組みをしていたその警備兵は、唐突に上から物を言われた事に腹を立てたのか、ジロリとその男を睨みつける。


「何だ、あんた? 客人か? 用があるんなら、勝手に奥にある執務室まで行けよ。

正規の客人なら通行証は持ってるんだろ? 見せてみろ。まさか、持ってないんじゃねーだろうな?

責任者を呼べとか何とか、俺に言われたって困る。俺の仕事は、ここの試験体が逃げ出さないように見張る事と、あんたみたいな不審者を追い払う事だからな。」

摘み出されたくなきゃ、とっとと・・・・・・・ひィッ!?」


警備兵はそこで口を噤まざるを得なかった。

男の双眸に宿った鋭い眼光に呑まれて声が出なくなってしまったからである。


冷や汗が止まらない。

まるで蛇に睨まれた蛙のように。

ほんの一睨みで萎縮し、畏怖し、震え上がってしまっている自分に気付く。



「能書きは良い。

連れて来い、と言ったのだ。もうこれ以上は言わんぞ。

俺に同じ台詞を二度も言わすとは、大したものだ。」


静かな怒りを込めたこの男の言葉に、慌ててインターフォンを入れる警備兵。




ややあってやって来た初老の研究所所長が、男に敬々しく頭を下げてこう告げる。

「これはこれは、遠いところから遥々とお越し頂いて誠にご足労様です。

ジェームス・クライブ少佐。」


それを聞いて、先ほどの警備兵が驚きの声を上げた。



「きょ、きょ、”凶眼”ジェームス!?」



「如何にも。そんな名で呼ばれた事もある。

・・・所長。ここでは客人に茶も出さずに追い返そうとするのがマニュアルにでも載っているのかな?」



皮肉たっぷりにそう言い放つ、”凶眼”の名で恐れられた伝説のMSパイロット。


前大戦を戦い抜いた者で、この名を知らぬ者は無く。

顔を知らなかったのはこの警備兵が寡聞であると言わざるを得ない。


「しししししし・・・・失礼致しました、クライブ少佐ぁ!」

慌てて敬礼を取り、背筋をこれでもかと伸ばす警備兵。


「そう畏まるな。何も取って食おうとしている訳でもある無い。

・・・・・ふん、まあ良いわ。

新兵はしっかり教育する事を勧めるぞ、所長。


さて、俺の訪問の理由については聞いておるな?」



「はい。フランク・フェルディナンド大佐より命令を拝領しております。


研究所移転に伴う事務処理、及び、現研究所の視察を兼ねて、部下を一人送る、と。


・・・・・まさか貴方の様な前大戦の英雄が送られて来るとは夢にも思いませんでしたが。」


所長はまじまじとこの伝説の男を見つめる。



ジェームス・クライブとも有ろうものが、こんな使い走りのような任務を任されているとは。

かの”凶眼”は、戦争が終わった今、厄介者に近い扱いを受けているのか?

功績を考えれば、最低でも大佐くらいにはなっていても可笑しく無いだろうに。


上にも容赦無く自分の意見を主張する男である、と聞いている。

それ故、上層部からは疎まれている、という所か。

その実力に対する嫉妬も過分に有るのかも知れない。


最も、政治的手腕には長けて居そうに無い男であるが。

乱世の英雄が、治世に於いて能臣であるとは限らない。




「左様。・・・・まあ、言いたい事は解る。皆まで言うな。

所詮、俺は戦う事しか能の無い男だと言う事だ。

あの青瓢箪に顎で使われるのは気に食わんがな。


まあ、平和の代償としてしばらくは甘んじて受け入れてやるさ。


・・・・・・そう言えば、あの男はどうしている?

一時期、ロバート・ガードナーが此処に着任していた、と聞いているが。」



「は? ああ、ガードナー補佐官殿ですか?

あの方なら、例の”ラガン事変”に於いて、責任を取る、との事で補佐官を辞退されましたが。

・・・まあ、私はその時はちょうど、反逆者二ール・ラガンの就任の所為で、所長の地位を追われて居た時期でしてね。

お恥ずかしい事ながら、あの一件のお陰で舞い戻って来たと言う訳です。他に適任も居ないようですし。


だから、ガードナー殿とは直接の面識はさほど無いのですが。

少佐はあの方と知己の間柄でございましたか?」



「・・・戦友。腐れ縁だ。

あの男も俺と同じで、戦い以外の事はまるで出来ない奴であるからな。

辞職して正解、という所だろう。


その”ラガン事変”とやらについてだが。

俺は報告書に目を通した程度にしか知らんのだが。


詳しく聞かせてもらえないか?」


ジェームスの問い掛けに、所長が遠慮がちに返す。


「いえ、私も同じ程度にしか知らされておりません故に。

どうも、私には上層部が意図的に真相を隠したがっているように思えて・・・・・・


・・・あ、これは失礼。余計な事を口走りましたな。今のは忘れて下さい。



書類のチェックは視察を済ませてからに致しますか?

ならば研究所内をご案内差し上げますよ?」



「ああ、そうしよう。頼む。」



ジェームスは、老所長に促されて再び研究所の廊下を歩み始める。



*****



此処はまるで牢獄のようだ。

ジェームスは収監された強化人間達の姿を見ながら、そんな感想を浮かべる。


最も、ほとんどの”実用的な”試験体たちは既に新研究所の方へ移送され、ここに残っているのは謂わば”廃棄待ち”の試験体ばかりである、

との事だったので、事実、彼らが暴れないように見張るだけの”牢獄”だったのかも知れない。


鉄格子越しに聞こえてくる怨嗟の声。苦痛に塗れた呻き声。狂気の叫び。

薬物によって精神を蝕まれ、肉体を蝕まれた試験体たちの慟哭が聞こえてくるようだった。

ジェームスは眉を顰める。


これが人の成した業なのだろうか?



と、一つの檻の前でジェームスは足を止める。


檻の中のその試験体は、床に落ちた紙屑を拾い集めてはパズルの様に並べ直し、ヒステリックにそれを撒き散らしてはまた並べ替えるという動作を繰り返していた。


「・・・・・所長。こやつは一体、何をしておるのだ?」


そう尋ねたジェームスに、所長はふと考えるように視線を天井に向けた後、思い出したように返答する。


「ああ、その試験体はですねぇ・・・・・

件の一件の時に逃亡した強化人間の片割れですよ。

大分精神がやられてるようでしてね・・・・うわ言の様に呟くんですよ。


胸の穴がどうした、だの。先生はどこに行った、だのって。


もう一体の片割れは、比較的安定してたようですので、”ヘブンズベース”の実験部隊に送られたみたいですけど。

こっちはどう見ても、もう・・・・・・


それでも、操縦技能はずば抜けて高い個体なもので、しばらく廃棄はせずに経過を見ていたんですが・・・


先日、突然狂乱して、警備兵の一人を傷つけてしまったんですよ。

それで隔離錬に移された訳です。」



「突然暴れたのか? 理由も無くそんな状態になるのか? 強化人間という奴は。」



「はい。幻聴や幻覚が見えたりするケースも稀ではありませんから。

まあ、この個体の場合、実験中にあの紙切れ・・・・・ええ、今、彼が拾い集めている物です。

あれをじーっと見つめて何やら呟いていたのを、警備兵が無理矢理取り上げたのがきっかけだったそうです。


何度注意してもその行為を止めなかったので、頭に来て強引に奪い取って破り捨てたら、急に凶暴になって暴走した、との事ですね。


私が再任する直前の事ですから、詳しいいきさつは解っていませんが・・・・


まあ、その程度の些細な事で直ぐに暴走してしまうほど、精神が擦り切れているという事でしょうね。


もう人形と言うより、獣と言うか・・・・・・それに近い状態かと・・・・・あっ、何をなさる心算です、クライブ少佐!」



所長の話を聞きながら、ジェームスはその個体が収監されている檻に無造作に近づき、鉄格子の隙間からそれを観察した。


試験体はしきりに何かを呟いている。


・・・・トリー・・・・シュト・・・・リー・・・・


薄暗い檻の中を目を凝らして見てみると・・・・・その紙切れに走り書きの様に書かれた文字が見える。



”・・a Sytry” 


シュトリー。


前の文字は破損して既に読めなくなってしまっていたが。


そして、掻き集められたその紙切れは、どうやらスケッチブックの一ページに描かれた”肖像画”の様だ。

所々失われていて断定は出来ないが、どうやらこの試験体自身をスケッチした物であるらしい。




「クライブ大佐! 危険ですよ、そんなに近づいては・・・・・」


ジェームスは慌てて彼を呼び寄せようとする所長に、淡々とした口調で返答する。



「なあ、所長。・・・・・・人形や獣が、”泣く”と思うか?

”鳴く”でも無く、”啼く”でも無く、だ。」



「? 何を言っているのです?

”泣く”? 涙を流して哀しむ、という事ですよね?

いいえ。それは人間だけの特権ですから。


・・・・・それがどうかしましたか?」



「泣いておる。」



「だから、誰がです?」



「こ奴が、だ。解らんか?」



所長はジェームスの言葉を聞いて、収監された試験体をもう一度見つめる。


蒼白の顔色。

双眸の下に出来た深い隈。


「・・・・・・涙など流していませんよ?

いや、涙なぞ流す筈はありませんよ。

診断の結果、”感情”という物が完全に抜け落ちてしまっている、と報告されてますから。

N0.14”レラージュ”は。」




所長の怪訝そうな言葉を聞きながら、ジェームスはこの”レラージュ”と呼ばれた個体に思いを馳せる。


恐らく、掻き集めている紙屑は、彼が感情を完全に失う前に手に入れた大切な物。

それを懸命に手繰り寄せる。

バラバラに散逸した記憶を取り戻そうとするように。

失った絆を繋ぎあわそうとするように。


流れぬ涙の代わりに血を流し、慟哭しながら。


この男の記憶と生命の灯火は、まだ消え失せては居ない。



ジェームスは自分の目頭に熱いものが込み上げてくるのを感じた。


「所長!」


やや怒鳴りつけるような口調で放たれたその言葉に、飛び上がって返事を返す所長。


「は、はい!? 何でしょう、少佐。」


「この者は俺が貰っていくぞ。」



驚愕の余り、口を半開きにして呆気に取られる所長。


「な、何をおっしゃっているのです?

廃棄寸前のスクラップを引き取って、一体どんな利用価値が有ると言うのです?

腕の良いパイロットなら、他にもたくさん居るでしょうに。」



「なあに、気にするな。所長には迷惑はかけん。

どうせスクラップにするなら、廃棄する手間が省けるだろう?

それにこれは強化人間の運用試験の一環だ。

この者が戦果を上げる度に、お前たちのやった研究は評価される事になるのだ。

そちらに取っても悪い話ではあるまい?


手間はかけさせんよ。

ただ、この後に一枚だけサインする書類が増えるだけだ。」




クリス・レラージュは、そんなやり取りを続ける檻の外の二人を鬱陶しそうに一瞥した後、一つしかない小さな窓から灰色の空を見上げた。


何も思い出せない。

でも、何かが確かに此処に在る。

胸の真ん中にぽっかりと空いた穴の中で確かに息づく暖かい存在。



容易く両手に収まるほどの四角い世界の中で。

今にも落ちて来そうな曇天の空の雲間から光が射した。




*****




眼前に広がるは一面の白銀の世界。

肌を焼き付かせるような冷気と、無機質な大地。


吐く息はどこまでも白く。

心に残った残り火すらも消し去るような、そんな場所。

”この世の果て”


ヘブンズベース。

荒れ果てた雪原の大地にこの基地は聳え立っている。



鼠色の研究所を放たれて、新たに送られたのは再び鼠色のコンクリートに覆われた基地。


ブラド・バルバドスは自嘲気味に微笑む。


こんな所で、魂を燃やし尽くすような戦いを望む事は出来るのか?


何も存在しない死の大地。

空っぽの俺には相応しい世界なのかもしれない。



最も、自分という存在がどんな人間なのか? それすらも曖昧な記憶の断片の中から類推するしか無い訳であるが。

過去の記憶は酷くおぼろげだ。


だが、一つだけ確実に変わった、と認識した事がある。


毎晩のように見ていた、あの赤い紅い心地の良い夢。

アレを見る事だけを楽しみに、この糞ったれな世界を生きる事を義務のようにこなして来たというのに。


今は、あの夢を見るのが怖い。


俺だけの紅い世界の中に、異物が混ざり込んでいる。


血塗れで抱き合う二人の男女。


彼らが誰であるか・・・名前も顔も全く思い出すことは出来ない。


けれども決まって二人の眼は、ブラドを恨めしそうに睨んでいるのだ。


そして気付けば、自分の身体も赤い紅い液体に塗れ、そして迫り来る”死”がブラドを包み込む。



暗転。


何時も決まってそこで眼が覚める。


”悪夢”へと変容した、かつての彼の唯一の拠り所。



故に今の彼は、以前よりも更に凶暴な形質を露にしていた。

常に何かに苛立ち、常に闘争心を剥き出しにする。


ほとんど隔離されたような場所に、狭い個室を与えられ、四六時中監視カメラで見張られ。

僅かに許された外出時に見える景色は、何時も変わらぬ雪原の大地。




「バルバドス少尉。」


彼を監視する役目を仰せつかった連合軍士官の女性が、後ろから声をかけてくる。


ブラドは、何処かの誰かに勝手に名付けられた”バルバドス”という名を気に入ってはいなかった。

故に振り返ってその女性仕官を睨みつける。


”ブラド”という名前はかつて自分で名乗ったものであるらしい。

だが、コイツらに呼んで欲しいとは決して思わない。



「バルバドス少尉。貴方宛に手紙が届いています。」



極めて事務的に、女性仕官が今時珍しい手書きの手紙を渡してくる。

封は既に切られている。

それが軍にとって害のある内容であるかどうか、それを先に確かめたのだろう。


引っ手繰る様にその手紙を受け取る。


差出人の名前は・・・・・・・『ロバート・ガードナー』


知らない名だ。


・・・・・否、”知っている名”から手紙やメールが届いた事など今までに無い。

これまでのものは全て、軍の関係者から指令を伝える伝令だった。


だから少し興味が湧いた。

もしかしたら、俺が未だ昔の事を覚えて居た時の知り合いの書いたものかもしれない。


封筒から手紙を取り出す。

そこには蚯蚓がのた打ち回ったような汚い文字が羅列されていた。




『よう、赤毛。

久しぶりだな? ああ、違うか。元気か? 

どーも、こういう畏まった手紙ってぇ奴ァ、俺ァ苦手でよ。

んまあ、細かい挨拶は抜きで手短に書くわ。


・・・・・・俺の事、覚えてっか? 

忘れちまってても構わねぇから、最後まで読んでくれよ。


おめぇに渡したいモンが二つばっかしあんだわ。


俺の昔の知り合いがよ、仕事でおめぇ等の居たあの研究所に行ったらしいんだわ。

んで、な。


どーも、おめぇともう一人の小僧へ、・・・・・お嬢ちゃんが残したとしか思えねェ代物が、残ってたんだと。

あのラガンの馬鹿の前任であり、後任でもある所長のジジィがよ、割と人情のある奴だったみてぇでよ、残ってた分は捨てずに取って置いてくれたらしい。

・・・・・んまあ、人情っていうより、自分があの事件について知りたいから、手がかりになるもんを残しといた、ってのが俺の腐れ縁のそいつの意見だったがな。


・・・・おっと、話が逸れちまった。どうも、手紙は苦手で良くねェ。何言ってんのか読み難くて悪ィな。



お嬢ちゃんの遺品は、クリスって小僧には、俺の腐れ縁が確かに渡したってことだから、心配すんな。

・・・・・・・お前の相方だったその小僧は、その腐れ縁が引き取ったらしい。


本当はよ、俺がおめェを引き取ってやれりゃあ最高なんだが・・・・・・



おめェはあの後、正式に連合軍の少尉サマに仕立て上げられちまったんだよな。

そうなっちまったら、俺にゃそんな権限もねェし、資格もねェ。


本当に糞の役にも立たねェな、俺は。


・・・・・・お前と再戦するって約束も、果たせそうにねェ。


済まねェ。本当に済まねェ。


へへっ、こんなん、手紙に書いてもおめェは気色悪がるだけだろうな。

所詮、俺の自己満足かもしんねえ。

でも最後まで読んでくれ。

これが俺の正直な気持ちだから、よ。



せめてもの罪滅ぼし、っつーか、俺に出来る精一杯の事として。

この手紙と、お嬢ちゃんの遺品は、全く改竄する事無く、確かにそのまんまでお前に渡せ、ってェ圧力はかけておいたから、よ。

お前の手に渡る前に、頭の固ェ馬鹿軍人どもに押収されちゃたまらねェからな。


しっかり中身確認しろよ。それがお嬢ちゃんと先生への手向けだ。


・・・・・俺に出来るのはこの位の事だ。


じゃあ、な。

もしお互い生きてたら、またどっかで会おうぜ。


それまで、達者で居ろよ。ブラド。
ロバート・ガードナー』




最後まで手紙を読み上げて、ブラドは首を傾げる。


書かれている意味は全く理解出来ない。


一応、この手紙の差出人と自分は知り合いであったようだが・・・・・


だが、何故か胸に込み上げてくる物があった。




封筒には二つの”遺品”が添付されていた。


一つはスケッチブックの一枚を引き千切ったもの。

一つはボイスレコーダー。



丁寧に折られた紙切れを広げてみる。

そこには、ブラドを模写したと思しき肖像画が描かれていた。


”Eva Sytry”というサインと共に。



「・・・・・・何だ、こりゃ? 下手糞な絵だな、オイ・・・・・・」


そう言いながらその絵を眺める内に、彼は自分の両目から、熱い雫が次から次へと溢れ出して来る事に気付く。



「あァ? 何だよ、こりゃ。何で俺・・・・・・」


雪原に滴り落ちる涙が、足元の雪をほんの少しだけ溶かす。



記憶の断片は、忘却の海へと流れ込み、全てを拾い集める事は適わなかったとしても。

それは確かに其処に在る。


決して消え去った訳ではない。


絆という名の奇跡は、確かに其処に在る。



涙を拭き取ろうとして誤って再生スイッチを押したボイスレコーダーから、天真爛漫な少女の声が流れ始めた。




●Epilogueへ続く●