Epilogue 翼を休める龍は何を欲す

その後、遅れて現れたデストロイはカイの手によって破壊された。
交戦した地上部隊の被害はともかく、周辺都市への被害には及ばなかった。


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数日後・・・

GOS本部では、ガイルはいつもどおりに書類に目を通していた。
通信室から連絡が入る。

『総監、地球のカイからの通信です』
「分かった。繋いでくれ」
『了解しました』

通信画面に部下の映像が映し出される。

「それで、指令の方はどうなった」
『完了しました』

カイが答える。

『ギュスタフ・リントヴルムの搭乗機とされる新型MSを確認。
 交戦の末、これを撃墜しました。彼の死亡も確認済みです
 その後、地上部隊と交戦中のデストロイを確認。
 これも交戦の末、撃墜しました。
 地上部隊の被害はまだ未確認ですが、恐らく甚大だと思われます』

「相変わらず仕事が速いな」

『いえ。それほどでもありませんよ』

既に聞き慣れた部下達の言葉に満足そうな表情をするガイル。
が、すぐに顔を引き締める。

「分かった。調査グループはこちらから派遣しておこう。
 カイ。突然で悪いが、お前には新たな任務に就いてもらう」

『はい』

「モンゴル近辺に旧ザラ派のテロリストの残党が現れた。
 既に別働隊を先行させているが、彼らだけでは手に負えないそうだ」

『分かりました』

ガイルは最後まで言う前に任務を受けた。

「これまでの指令の報告書はそれらが片付き次第でいい。頼んだぞ」

その時、カイは何かを思い出したのように話を切り出した。

『そうだ。"魁龍"に応援を要請してもいいですか?』

カイの言葉に眉を顰めるガイル。
怒っているというより、強い疑問を感じている顔だ。
ランスも怪訝な顔をしながら、隣にいる同僚の顔を見る。

「…彼ら東アジア共和国は反ロゴス同盟軍の参加を表明している。
 大規模な作戦後とはいえ、この時期に応援を要請しても誰も出てこないと思うが?」

『いますよ』

「む?……ふっ。そういう事か」

断言するカイに一瞬疑問を感じたガイルもすぐに真意を理解した。

「構わん。お前の好きにするといい」
『ありがとうございます』
「今夜はゆっくり休むといい。明日から任務に取り掛かってくれ」

『はい』

カイは、失礼します、と言い通信を切った。



通信が切れた画面をしばしガイルは見ながら、溜息をつく。

「全く、いくら反ロゴス同盟軍に参加しているとはいえ、連合に話を付けるのは楽なことではないのだぞ。…まあ、仕方がないか」

そうして、再び通信機に手を伸ばした。



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あの後、カイは近くのホテルにチェックインした。
勿論、名前や所属を明かす訳にはいかないので偽名である。



風呂から上り着替えたカイは椅子に座る。
机の上に置かれたノートPCを起動させる。

素早くパスワードを打ち込み、データを閲覧する。

そこに映し出されたのは、

『 GDO-Xa AURORA 』

東アジア共和国のフジヤマ社が初めて開発したGタイプ。

それは紛れも無くアウローラのデータであった。

あれこれとファイルを開いたり閉じたりして没頭する。

("東アジアガンダム"の性能を見てみたい。それに…)

「ふあぁ……」

暫くして、欠伸をしながらPCの電源を落とした。

(ティエンさん…彼にも会ってみたい)

ベッドに潜り込む。

天井を見つめ、目を瞑る。

「お休みなさい」

カイは僅かな時間の眠りについた。



≪-翼を得た龍は何を望む- 〜完〜≫