-虎の子の竜-

ZGMF-X05G ワイバーン・・・

今この機体に乗っている子は私の前の長と仲が良かったみたいなんだけど・・・


***


BEFORE C.E 70



【フレバー!!くそっまたか!】


<『ドラッヘン・フルーク』・・・19人中19人のテストパイロットが死亡>

「か・・・はあ・・・・」

たった今20人目を計測した。


ドラッヘン・フルーク―。
 
背部にあるこいつはかなりの高出力ブースターで今こいつの実験をしているところだ。
ターゲットを打ち落とし、その終わりに暴れ馬たるブースターを使うというもの。

障害物衝突・モーター暴走・重力圧迫、様々な問題を露呈しているんだが、精密なので少しでも軌道がそれたらオジャンだ。

そんなこんなで今日もまたダメそうだ。主にパイロットが・・だが。


「どこに行き着くのやらねあれは。障害物にか、あ〜あモーターもイカレてんよあれ」
「というか連合のやつらはMS持ってないし白兵戦のパーツ足してもねえ。ジン対ジンしかできないっしょ」
「あはは〜それあるな〜」



『それはどうかな?お二人さん』



「!!・・サディーさん!失礼しました!」
「右に同じく申し訳ありませんでした!」

「謝罪はいいわ。でも『白兵戦のパーツを足しても・・』はNGかな?・・・・・・見て」

一人のパイロットが『ドラッヘン・フルーク』を装備したジンに搭乗している。

「彼は?あんな子いたっけ?」
「さあ新人か?いいんですか死にますよ?」

「私が今連れて来たのよ・・一般兵だけどね」



ガアアアアアァァァァ――

青黒い宇宙に一匹の竜が飛翔した――――



【ああ!?なんだ!?アレは誰が乗っているんだ?聞いてないぞ!】

【早く止めさせろー!!!管制室ーー!】



「一般兵!?正気ですか!なんで死亡率100%の代物をそんな奴に・・・」
「まあデータは熟知しているんだけどね。」
「そーーーーーんなことよりぃ『白兵戦』の話。聞かせてくださいな、サディーさん」

障害物を悠々とかわしターゲットに向かってゆくジン

「あなたたち・・聞いてないの?連合のGATを?」
「GAT?聞いてないですよガンダムの話なんて・・・ククッ」

左腕に握っていた宇宙用ヘルメットをパッと放した。

「本物見たいね『サディー』を追求しないあたりね」
「いい加減やめなさいソレ」


3つのターゲットを重斬刀で落とした


「ほ〜〜〜・・だって私達が『産休から帰属して初日の諜報員』なーんて知られてるからスパイ多発ですよー。
今日で3人目ですよー『サアディーさん』」

「死亡率は86%。マシントラブルで途中棄権もあるからね。それにしても、ホント大丈夫ですかあの子は?
ガイル総監が珍しくすんなりと了承したそうですが・・・。
でも俺もこうして右腕もがれてるんですよ?」

「見えたのよ、彼には。今までに無いものがね」



「あっ・・・・・・」

【おいっ見ろアレ・・・】



翼が開いた――――

大画面のモニターの前にガード・オブ・セレネ全員が立ち止まった




『竜は一寸にして昇天の気あり』




大量の障害物の中にターゲットを確認する――――




        見えた―― 一線を画する『竜の目』を




ブースターの光が激しくうねる―――




「・・・すごい・・・・・」

両手を口に当て泣きそうになった・・・また・・・




背部高出力ブースターを駆使し、連続の瞬間最高速度で舞う――――




「14・・・7%・・越えた!!!お前だけだぞ!この最果てまできたのは!!!」

俺だって行ってない境地に辿り着いた・・・本物だ・・この男は・・・・・。




    ガッ―――




機体に障害物がかすった―――――死ぬ―――

『!!!!』

その光景を見ていた管制室に動揺が走る。


「落ち着け」


その状況に喝を入れたのは、ガイル・レディウス。
ガード・オブ・セレネの総監にして、今回のパイロットの搭乗を最終的に許可した人物である。

その言葉に皆、冷静さを取り戻し、次の瞬間、その言葉の意味を理解する。



「おっと、危ない危ない」



揺れる機体に中で、体に纏わりつく重力を振り切った――――――




           越えた―――――――




 ワアアアアアァァァァァーーー!!!!!!!


ガード・オブ・セレネのMSドッグ、管制室、モニター前で歓喜の歓声が響いた。
実験最終日、そしてその最後の最後にこんな見事に成功したのだからお祭り騒ぎだ――。

最後の的を射たMSが着艦した。
モニターを見ていた3人は呆然とした。その美しい舞にただただ呆然。

「これは」
「こっれは」
「でしょう?やっぱり彼は本物だったわ!!」


やぁったーーーーー!!!


歓喜に熱が入った。
そう今見れたこの奇跡に誰もが酔いしれた。
長い長いトンネルを抜け”GOS”の新たな門出を祝う光に。




「カイーーー!!!」




――――――――――――

――――――


***


「人材育成してみるわ〜私、ということで彼はよろしくね〜〜」

その後、彼を見て思ったのかサアディーさんは『念願の夢、傭兵部隊でしたいことがある』と言い出して聞かなかった。
やけにあっさりGOSを抜けた、彼女らしい。

どんな夢なのか聞いておけばよかったなあ。



≪-虎の子の竜- 〜完〜≫


[あとがき]

私が書いた始めてのSS最後まで見てくださり感謝の一言です。
このSSはブラオバウムさん、水の羊さんにコラボを要請し、若干の修正の末完成に至ります。
お二方、誠に感謝しております。。

序章はなんと水の羊さんが作ってくれました(#^ー゜)v

イメージの足しに・・とのことですがかなりの力作ですよね〜。
ガイル総監の過去話だそうです。

水の羊さんありがとうございました!


気づいた方もおられるやもしれませんが、「サアディー」は私のイラストコーナー「EACH LONG WAY」の≪傭兵部隊”ユピテル”≫の長であるミレイルの前任の長です。

色々謎な彼女ですが、っとまあ謎はほぼ解明されていないわけですが・・

それでは小説はまたいつの日にか〜よしなに。