Prologue

これは偶然か・・・、はたまた運命か・・・


久しく戦友の墓参りに行った折、もう一人の戦友に出逢った。
彼女も私の戦友であり、墓を参った戦友の妻でもある。

「お久しぶりです、ガイル。今はガイル総監とお呼びすべきですか。」
「昔どおり、ガイルで構わんよ。ここは職場ではないし、君も現場を離れて久しいだろう。」

「そうね。」

このまま、他愛の無い会話で終わらせてもよかったのかもしれなかった。



「・・・聞いてもいいかね?」
「・・・息子の、カイの事?」



すべてを見透かしたように彼女は答えた。

「察しがいいな。」
「あなたとは長い付き合いですからね。」
「そうか・・。で、よかったのかね。息子をアレと同じ道を進ませてしまって・・・。」

彼女の表情がすこし曇った。

「・・いいといえば、嘘になるでしょうね。でも・・・」

そして、迷いを断ち切るかのように彼女は言葉を紡ぐ



「あの子が、『自分で決めたことですから』、そう言ったのよ。」

「・・・・。」



「そう言われたら、私にはあの子を止める術はないわ。」

「・・・そうか。」
「それに、あなたにはわかったはずよ。あの子のもつ力を。」

本当に見透かされたように思う。
確かにあの子は、若い頃の彼の父親、ヤン・シャオルンを髣髴させるものであった。

「かなわんな。」
「今の私にできることは、見守ることだけよ。だから、ガイルも気にすることはないわ。
あの子はあの子、ヤンはヤンよ。」


「わかったよ。ありがとう。」
「どういたしまして」


それから数日の後、若き竜が舞う姿をその目にすることになる。



≪-虎の子の竜- 本編へ続く≫

執筆:水の羊