FINAL PHASE 終曲 ―Finale―
辺り一面の残骸。
ザフトの機体達と、一機の黒いウィンダム。
その中に、無傷を誇るMSが一機。
荒馬を思わせる焦茶色のバクゥタイプの中、二人の男女がモニターを眺めていた。
視線の先、ディスプレイ上では、スカンジナビアの国営放送局からのニュース放送が垂れ流されている。
〈臨時ニュースをお伝えします。つい先程、ザフト軍籍と思われる輸送機が我が国の領海内で不時着しました。
乗員は少年一人。意識不明の重体となっている模様ですが、詳細は明らかになっておりません。
詳しい情報が入り次第、逐次お伝えして――〉
女の細腕が伸び、放送を切る。
「間に合わなかった、か」
後部座席の男が、そう洩らした。
「ええ、それにしても――」
漆黒の塊を一瞥して、女は言う。
「あの“凶つ天狼”も地に堕ちたものね・・・・やっぱ二世は見劣りするのがお決まり?」
「そんな所じゃない? それよりもとっとと帰ろうか、無駄骨だったし。
回収は正規軍の仕事だろうから」
「もう、これじゃ報酬入んないじゃん! どうしてくれるのよ」
「爆睡して全然起きなかったのは誰だよ、もう・・・・
僕なんて愛しの戦友乗るの我慢して、このじゃじゃ馬乗ってるのにさ」
静寂なる戦場跡に、二人の会話だけが響く。
*********
後日。
スカンジナビア王国、宮廷内――
「よう、お前が噂の新人君だな?」
気高さと軽薄さ――相反する二つを同時に備えるかのような印象を与える男が、護衛隊の制服を纏う少年に語りかけた。
少年は直ぐに敬礼する。
「男で石竹色の髪か・・・・・・」
その言葉に、一瞬少年は敵意の眼差しを男に向けた。
まるで、忌まわしい記憶を呼び起こされたかのように。
だがそれに気付かぬ様子で、男は続ける。
「・・・・なかなか粋じゃないか。おれは好きだな、そういうの」
少年の目から反感は消え、軽く驚いたような表情が浮かぶ。
「副隊長! またこんな所で油売って、会議に遅れますよ」
凛とした声と、それに相応しい雰囲気を醸し出す女性が、男――護衛隊副長、ハルトル・リズ・アスピースを咎める。
「いいだろ、少し位。どうせ遅れても大丈夫だって――痛てててっ・・・分かった分かった、直ぐ行くから、耳引っ張るのは止めてくれ」
慌てて体勢を整え歩き出しつつ、ハルトルは最後に振り向き話しかける。
「まあ仲良くやろうな、ロイ・ライブス君!」
「命の名と共に、お前達の生、俺が継いでみせるさ・・・・・・」
誰にも聞く事叶わぬ程の小声で、少年は低く、呟いた。
≪-崇高美- 〜完〜≫
[あとがき]
無事完結致しました“崇高美”、お楽しみ頂けましたでしょうか。
ラストの二人は、次回作に出す可能性のあるキャラです。
(やっぱ出さない、となった時の為名前は出していません)
拙い点も多々あったとは思いますが、記憶の片隅にでも留め置いて下されば幸いです。
あまり長々と書くのもどうかと思いますので、この辺りで。
お読み頂き、ありがとうございました。
|