PHASE-0 前奏曲 ―Prelude―


宵闇の中を、俺は駆けていた。目指すは連合のミゼ基地。


……何の為?


……生き残る為、かな。




基地を目前にして、三の巨神が立ちはだかる。
身の丈は人の十倍程――モビルスーツ、ストライクダガーだ。 


スピードを上げ、一気に距離を詰める。

近づいた俺に、最前の機体がビームサーベルを揮った。
即座に掲げた板切れシールドが、一瞬で融け落ちる。


俺は咄嗟に奴の胴を蹴りつけた。衝撃で相手が大きくよろめく。

独りでMS三機相手――こっちだってMS乗ってるんだ、勝てない訳じゃない。


トリガーを引くと、愛機のレイスタがマシンガンを撃つ。

多数の鉛弾が突き刺さり、最前の一機が倒れる。


軽い機体重量を活かして相手の頭上を飛び越え、真上から弾丸のシャワーを浴びせる。

二機目も討ち取った。


残った機には有り弾を全て送り込む。

向こうが堪らず盾を構えた所で懐に潜り込み、ビームサーベルで一突きにした。


ダガーの残骸からまだ使えそうなパーツを物色しては、レイスタ各部のラッチに引っ掛けていく。

慣れた作業だ、OSの補助を要さず短時間で終わる。



しばらくして基地から、新たな機影が姿を見せた。機数はさっきの倍だ。

「やはり、ミクの情報は的確だ……」

そいつらを目の当たりにして、俺は一人思う。

だがあんな数と渡り合える程、俺は賢くも馬鹿でも無い。


逃げる。

一目散に逃げる。

真横をビームが過ぐ。

構わず逃げる。



爆発と共に、ミゼ基地から轟音が響く。

仲間の仕掛けた爆弾だ。

「相変わらず派手にやるなぁ、カル……」

同時に音声が入る。仲間のパイロット、ソウからだ。

『こっちは終わった。さっさとずらかるぜ、ロイ』

それを合図に再び逃げる。

今度は、スモークディスチャージャーを使って相手を眩ます。

そのお陰で、無事逃げ延びた。



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予定していた合流ポイントで、俺は仲間たちと落ち合った。

「よう、ロイ」

ジンのパイロット、ソウが話しかけてくる。

「今回は微妙だった、連中も結構じり貧っぽかったぜ」

「まあ大丈夫だって、しばらくは喰い繋げるって。」

爆破工作やMS整備を担当している、カルが続けた。


「ならいい、か。まあ今日は楽に盗れたし文句は言うまい」

そういう俺にミクが愚痴る。

「それはあたしが基地のデータを調べて、“凶つ天狼”の留守の日を選んだからでしょ?
 全く、もうちょっと感謝しなさいよ……」


俺たち“LIVES”に取っては、ありきたりな日常。




だが、あるMSとの出会いが、俺たちの運命を大きく変える事となる――




≪PHASE-01へ続く≫