「これよりオペレーション・フェイスを決行する!事前にグゥルを射出しておく!連携プログラムを再度確認しろ!」
荒廃したアラスカの本土から数キロはなれた連合の領海内。
ボズゴロフ級潜水艦は浮上を開始していた。指揮官が作戦実行の兵士たちに再度作戦概要の確認を取る。
ケビン、アルナ、アロエ、そしてルーク。4人の赤服、それも特務隊の編成部隊。

全員が子供であることに不安を感じている人間は多かった。
この作戦の結果次第、プラントの運命は変わってくるのだから。
プログラムの改変を行うルーク、感じることは無い。
ただ今から戦いに出るだけである。それはただ「命令」であるから。

時間だ。

浮上したボズゴロフ級は発進用ドライチューブを展開していく。
別のチューブからグゥルが4機射出される。

「システムオールグリーン。すべて良好だ。ルーク・ラントフォルド、行きます」





-始まる鼓動- FINAL-PHASE 前編






〜アラスカ基地跡 地下都市〜

「あと数時間後には、我等はワシントンへ攻撃を仕掛ける」

「そして大統領府を占拠する!…そうであろう?フジオカ」

「ああ、この行動にプラントの命運が握られている」

「ルキーニとか言う情報屋によれば、われらの追撃隊がザフトにも連合にも組まれているそうだが」

「抜かりは無い。この地下都市の廃墟内、ここに到達するまで幾つもの罠を仕掛けてある」

「流石だな”武装戦人”の名は伊達ではないと言うわけか」

「フッ、全てはナチュラルどもを滅ぼすため。核の力もある。勝利は我等のものだ」

「フッフッフ…ハッハッハッハッハッハ!!!」




〜アラスカ本土1Km前〜

海上を移動していく4機のMS。
ディンレイブン、火器運用型試作型ゲイツ改、ブリッツアサルトシュラウド、そしてルークのゲイツ。
それぞれグゥルでの移動でエネルギーと推進剤を使わないようにしていた。

「それで、入電されたのは今だって?」

この4機内でのプライベート通信。ケビンがルークへ問う。

「ああ、テキストだけだが連合もこの事件に介入してくるらしい。MS部隊を送り込んでくる」

「って言うことは共同戦線?かな?アルナ」

ブリッツで簡単なジェスチャーをしたアロエ。右腕で意味不明な動きをしていた。

「…それは無い。おそらく邪魔者扱いされるだけ」

「うーん、どうするルーク」

「そうだな…一様こっちの問題だし、引くわけには行かないだろ?あとアロエ電力無駄だ、やめとけ」

「えへへーっ」

「……本土に入る」

「さて…と……どうしたものかね」

「そうだ、このケビン様が先に見てきてやるよ。ミラージュコロイドあるしよ」

「それだったらあたしも…」

「お前は装甲をパージしなきゃ使えないだろ?」

「あ、そうでした」

グゥルから脚部を切り離し独立行動に入った。
ケビンは自分のグゥルのサブフライトシステムの管理システムをルークに送信した。
加速するディンと対比するように減速していくルーク達。

「頼んだぜケビン。何かあったらすぐに通信しろ。俺たちは低速で前進する」

「了解したぜ、ルーク隊長よぅ」

高度を上げるディンは上に上がっていくにつれ徐々にミラージュコロイドで姿を消していった。
数秒たてばもうルーク達の熱源センサーからも姿を消していた。


姿を隠しながら雲ひとつ無い空を滑空するケビン、数分すると目標の入り口が見えた。
サイクロプスの爆発で発生したクレーターに海水が流れ込んでいる地点から100Mほど先。
データ上司令部の東側で一番遠い場所だった。このエリアだけはレンジ波の影響外だったらしい。

「あれは…?」

その入り口付近で数十機のMSが隊列を組んでいた。
連合の機体。ストライクダガーを初めとする大隊 新型も見える。
先程の話にあった連合から送り込まれた部隊、こちらとは圧倒的に数で勝っていた。

(え…と……20機ぐらいはいるか?つーかまだこんなに戦力残ってたのかよ)



「そういえば"ストリーム"ってどんなの?」

「ザフトが開発した"核"エンジン搭載の高性能MS、それの4号機」

「いやアルナ、そーいうことじゃなくってサ…」

「えーオレから説明させていただきます、アルナ、ケビンのサブフライト代わってくれ」

「…了解」

「オレも実物は見たこと無い。でもデータ上は馬鹿みたいな火力を持ってるらしい」

「あのフリーダム並みにだ」

「えー!?……マルチロックオンシステムとか付いてるの?」

「んっと、装備されてるのはそれの試作型らしいな。性能は下だが強力なのに代わりは無い。と報告書には書いてある」

「へけー。そうなんだー注意しないとね!」

「何でそんなにゆるゆるなんだよ、お前は」

「えへへーブイ!」

「やめろブリッツでVサインすんな!電力が無駄だっつってるだろ!」

「…2人とも、前」

アルナに言われるようにモニターへ視線をやる。

前方では爆炎が上がっていた。

「なっ!?」

『おい!聞こえるか!?こちらケビン!聞こえるか!?』

「ああ聞こえてる、どうした!?何の爆発だ?」

センサーにケビン機の反応が現れる。ミラージュコロイドを解除し3人の元へと戻ってきた。
サブフライトシステムを受け取ってケビンは説明を始めた。
ダガーの大隊と入り口の情報、そして

「トラップだ」

「トラップ?」

「それもMS用のけっこうなやつだ。まず機動力は奪われる。連合は3機ぐらいがやられてたぜ」

「むぅ…他のやつらは突入したのか?」

「ああ、めげずに20機ぐらい先に行った。俺たちも行こうぜ!?」

「そうだな…良し、行くぞ!!各員、グゥルとの連結状態を30秒後に解除。その後入り口に突入する。

  連合MSの移動プログラムを予測しておけ、良い方にも、悪い方にもな」

「あ、様になってるじゃん!」

「…調子に乗ったらダメ……」

「女子2人うるせー!」

まず最初にルークのゲイツがグゥルから飛び降りた。
続いてアルナとアロエも着地に成功する。

「突入!」

ルークが先頭に立ち、入り口に入っていく。
入り口から数十メートル先に動けなくなったダガーが2機倒れていた。
初歩的なトラップによって脚部が破壊されていた。

データによるとMSの通れる道は一本道だった。
奥に前進していくほど破壊されたストライクダガーの数は増えていった。
そして地下通路の入り口。この最深部に脱走兵がいる。
小さい数々の穴から地上から差し込む光がより一層不気味だった。

「言ってしまえば市街地戦みたいなもんか」

「だけどなケビン。こっちはエリアの地図しかないんだ。どこにまた罠が仕掛けられてるか分かったモンじゃない」

「……右前方400Mに爆発を確認」

「始まってるよっ!」

「ケビン、上からコロイドで索敵してくれ。アルナは足場を確保した後ライフルで援護してくれ」

「了解」「……わかった」

「オレとアロエは前進しながら直接相手を探す、Nジャマーの効果範囲に気をつけろ。レーザー通信以外は役に立たない」

「うん!」

「それじゃ行くぞ!間違っても死ぬなよ!」

「……ルークに言われたくない…」

「うっ!痛いところを……!!」

ルーク達は各員散開を開始した。
ケビンは再びミラージュコロイドを展開し最深部へと飛んでいった。
残った3人はある程度前進していった、撃破されたダガーもいる。
300M。アルナは上昇しあるビルを足場にした。

またどこかで爆発音が聞こえる。

「うう…あんまり市街地戦って好きじゃないんだよね」

「弱気になるなアロエ、オレだってめんどいんだよ!……アロエ、前方80M先のビルにミサイルを撃ち込んでくれ」

「何で?」

「話を聞け!トラップだよ!それと打った後すぐにビルの陰に隠れろ」

「あ、そっかー。それじゃあいくよー」

前かがみになったブリッツの背部から8発のミサイルが発射された。
その数は展開式ミサイルポッドのワンブロックの量だった。
ミサイルがビルを爆破する。するとビルの置くから何かが発射された。
壁代わりにしていたビルを削り取っていく、それは対MS用の散弾だった。

「うえー、あぶないねぇ」

「お前、俺が言うのもなんだけど赤服か?」

「ルーク!モビルスーツ反応だよ!多分」

「んにゃ、その必要は無いみたいだ。右へ移動する!」

ルークが移動した方向には戦闘中のストライクダガー3機の姿があった。
ビームサーベルを振り下ろすがやすやすと回避されてしまう。
その相手はデータにあったシグーアサルトだった。

「アロエ、あれがターゲットのひとつだ。3機相手に引けを取らないなんて…」

「ルーク危ない!!」

ルークのゲイツを押し倒したブリッツの腕に刃物がぶつかる。
PS装甲のおかげでブリッツは無傷だった。
実剣を振り下ろしていたのはターゲットのひとつ、ジンアサルトだった。
ジンは手段が失敗したのを悟ると、左腕に持っていたビームカービンを至近距離で放つ。
放たれたビームはブリッツのアンチビームコーティングシールドにかき消される。
アロエが視界を戻したときにはもうそこにジンの姿はいなかった。

すぐに後を追おうとするとブリッツの足元で爆発。
足元に仕掛けられていた地雷で増加装甲にダメージ生じてしまった。電力も削り取られる。

「くっそぉっ!!」

「焦るなアロエ!」

「飛んで!!ソードファングッ!!!」

ブリッツの左腕、グレイプニールの代わりに装着されたビームチャクラムが発射される。
自立回転するモジュールからビームが発生され薄暗い空間の中を突き進んでいく。
しょうがなくルークも同じ方向にビームライフルで援護する。
光の差し込まない場所で何かが弾けた音がした。

崩れるビルの煙がはれた先には右腕を失ったジンがいた。チャクラムがブリッツの腕に戻る。

そのジンに襲い掛かるストライクダガー、だが機甲突撃銃でコクピットを貫かれて返り討ちにあっていた。
だがあまり目にしない、新型のダガーが対艦刀でジンのコクピットを増加装甲ごと切り裂いた。
そのダガーはすぐ素早い動きで姿を消した。おそらく隊長機か何かだろうとルークは思う。

『ぉ…ぃ!!……聞こえ…るか…!?』

ルークのコクピットに雑音交じりのケビンからの通信が流れ込んできた。
Nジャマーの影響でこの距離ではよく聞こえない。
レーダーもダメだった。ここは別段Nジャマーの影響が強いエリアのようだ。

「よく聞こえない!ケビン、もうちょっとポイント803に接近してくれ!」

『…了……か……い…!!』


――――殺気。


通信を終えたルークにそれが伝わってきた。
瞬間的後部モニターに切り替えた。

無数のビームがこちらへ接近していた。
後ろで戦闘していたはずのシグーアサルトはすでにその場に折らず、
取り残されたストライクダガーが消し飛ぶ様が見られた。

「アロエ!!!後ろだッ!!!!」

レーザー通信を開き、叫ぶのと同時に振り返りシールドを突き出す。

「きゃあっ!!!」

アロエもかろうじてシールドを構えることができた。
だがルークよりも反応速度が遅れたため頭部の右側のアンテナがビームに飲み込まれる。
ビームはアンチビームコートに弾かれていった。

砲撃が過ぎ去った後、何かがこちらへ接近してきていた。
その熱紋はNジャマーの影響下にあっても映し出されるほど強力だった。
それこそ核の証だった。

薄暗い空間、ルークの真上から地上の岩が落ちてきた。
アロエも散開しビルの陰に隠れ、ルークはバックステップで回避した。
その振ってきた岩で地上に開いた場所から日の光が差し込む。
薄暗かった空間が光に照らされ、その姿を現す。



ストリーム



そう名付けられた核の力を持ったガンダム。

背部に巨大な砲塔を装備したの機体はツインアイを煌かせた。
ストリームは武道家の様な構えを取る。


殺気、それがルークにもアロエにもプレッシャーとなって襲い掛かった。



『我等の願い……邪魔はさせぬッ!!!!!!』



ストリームのバーニアが火を噴くのだった。


「下がるぞアロエ!!!」

「う、うん!」

ルーク、アロエは後方へと推進していった。
一方ストリームも加速を開始した。
薄暗い空間に響く、補助ローラーが地面との摩擦で火花を撒き散らす。

「速いッ!?」

重量の上がったブリッツやルークのゲイツでは到底出せない速度をたたき出したストリーム。
先に移動を始めたにもかかわらず、30秒もかからずに接近されていた。

「ルーク!!正面に大きいビル!曲がろう!!」

「了解だッ!!」

アルナは正面のビルの上にチャクラムを射出し、アンカー代わりにビルに上っていった。
一方ルークは建物にぶつかりながらもなんとか左に曲がりきった。
通常、ゲイツでやっと曲がりきれた、それ以上の速度では曲がり切れず減速するしかないのだ。

だがルークとアロエの読みは外れた。
ストリームは重量移動でローラーを上手く使い、ルークを追って曲がっていたのだった。
その速度を保ったままで10門の拡散ビームがゲイツへと放たれようとしていた。

(やばい!やられるッ!!!)

「………ッ!!!」

ストリームは突然減速を始めた。
ルークのセンサーに気づいた。味方のMSが上空からストリームに攻撃を仕掛けていた。

対艦刀を振り下ろしたのはアルナのゲイツだった。

だがストリームは振り下ろされた対艦刀を白刃取りで受け止めていた。
それは到底MSで出来るような芸当ではない、このストリームのパイロットと自身の性能の結果だった。

すかさず左腕をかざしエクステンショナル・アレスターを近距離で射出したアルナ。
いくらフェイズシフト装甲でもビームをまとったロケットアンカーを食らって無事なわけが無い。
これも通常なら直撃コース、しかしストリームは右腕をそのアンカーにぶつけた。
ストリームの腕にぶつかったアンカーは逆に破壊されていた。
それはビームスパイクの威力を示すには十分だった。

空中で姿勢をとり着地、左腕にも対艦刀を抜きレーザーをドライブさせる。

「………」

『こやつ……出来る!!』

両者とも目には見えない何かを感じていた。
アルナはフジオカから発せられる「殺気」というプレッシャーを。
対してフジオカはアルナから何かを感じていた。つかみようの無い何かを。

(なんつー殺気だ……近づけない……)

アルナのゲイツとストリームの間でにらみ合いが続いていた。

『ルーク!!大変だ!!オレは今お前の真上だ!!』

「どうした!?ケビン!」

『さっき入り口付近で友軍の反応を確認したんだ!それが、そいつらがこっちに攻撃してきやがった!!』

「どういうことだ……?過激派か…それとも………」

『とりあえずそいつらをどうにかしようぜ!』

「うん……アロエ!聞こえるかアロエ!!!」

「なに!?今ターゲット02と戦闘中なんだよぅ!!」

「02…シグーか…フェイズシフトもあるから…1人でいけるか?」

「うん!大丈夫だよっ!!」

『っちゅうことらしいから行くぞルーク!!!』

「おう!……アルナ………死ぬなよッ!」

「了解……負けないから…」

ルークのゲイツは路地を曲がってケビンの指定していたポイントへ接近する。
その付近へ行くと確かにMSの機影が存在していた。
機影が近くで止まる。数は5機、そしてビルを角に差し掛かる。


ルークは曲がらずそのまま正面を直進する。

直進しながら後部モニターに切り替えると曲がる予定だった角にマシンガンの玉やミサイルが激突していた。


「やっぱりか…敵……それに近くに来て熱紋が特定できた。シグー,2、バクゥ,2、それにディンが1」

「オレが空中のディンをやる、ミラージュコロイドがあれば有利に戦える。出来るだけ援護はするぜ?」

「わかった、隙を見つけ次第残存している連合兵に協力を申請してみる!」

ルークが熱源モニターに目をやると出てきた増援の部隊が3つに分かれていた。
無限軌道で移動する熱源は迂回してアロエのいる方角へと進んでいった。



再びブリッツからチャクラムが射出される。
弧を描いてシグーへと襲い掛かる。だが軽く回避されてしまった。
アロエは続いてミサイルを空中で姿勢をとっているシグーに残弾全て打ちつくす。
無数のミサイルがシグーへと襲い掛かる。数発のミサイルは迎撃したようだったが確実にシグーを飲み込むのだった。

立ちこもる煙を払ったのは一つの閃光。

「きゃあっ!!」

ブリッツの胸部に直撃した「シヴァ」は胸部のアサルトシュラウドを吹き飛ばす。
またフェイズシフトの恩恵に助けられたアロエ。胸部ブロックを排除した。
300M先の路上で着地するシグー、左肩以外の増加装甲はパージしていた。
噴射剤をうまく使えなかったため脚部にダメージを受け、道路にクレーターが出来ていた。
モーター類が悲鳴を上げ、オーバーヒートしているのが外部でも分かる。

「もらったっ!!!」

ビームライフルを姿勢制御し切れていないシグーへと発射しようとする。

右側を示すアラートがアロエのコクピットへと響き渡る。
レール砲とミサイルを乱射してくるバクゥが接近してきていた。
バーニアを噴かし空中にジャンプして弾薬を回避する、同時に巻取り中だったチャクラムをドライブさせる。
バクゥを飛び越え、チャクラムを振るう。
向こう側へ過ぎ去ったと同時に先頭にいたバクゥはワイヤーに巻き取られ空中でチャクラムに切り裂かれていた。

「反射的に落としちゃったけど…なんでバクゥが!?」



ミサイルを発射後、ミラージュコロイドを解除しディンへと一気に距離を詰めるケビン。
ビームソードでコクピットを貫き撃墜する。
2機のシグーに悪戦苦闘するルークの応戦に向かう。

振り切られる重斬刀、ルークの右腕が切り飛ばされる。
バランスを崩しながらもジャンプし、もう1機の追撃を回避する。

「くそっ!やっぱり10%ぐらいじゃムリなのか!?反応速度が遅いィ!!うわっ!」

空中のゲイツにバルカン砲を集中放火する2機のシグー。
シールドでガードしたもののストリームの強力な砲撃で消耗していたシールドだったため、耐えられるモノではなかった。
吹き飛ぶシールドとともに脚部や全身の装甲も削り取られていった。

姿勢制御できずに道路に叩き付けられ、身体的な衝撃で吐血するルーク。
ヘルメットのフェイスガードに付着した血がその衝撃を物語る。

「くっそぉ……!やっぱオレは……くッ!!」

ヘルメットを脱ぎ捨て機体のプログラムを改変する。
右腕と損傷箇所を計算してOSの叩き込む。
ゲイツのモノアイが再発光し動きが少しではあるが軽くなる。
エクステンショナル・アレスターを射出しシグーの片腕を吹き飛ばす。
違うシグーにマシンガンの玉が降り注ぐ、ケビンの援護攻撃だ。

「ケビン!コロイドは使えないのか!?」

「ムリだ!これ以上使うと活動時間を大幅に短縮することになる!!」

「万事休す……か?」



「ッ!!」

後方へジャンプするとともにアレスター改をビルへと食い込ませ着地の衝撃を吸収していた。
より速い行動により追撃のビーム砲を回避する。
アルナの動きもまた常人ではまね出来ないものであった。

『MSの腕を軸にして回転するとは…こやつ、只者ではない……まさか空間を認識している!?』

即座にスナイパーライフルを展開して4発ビームを射出する。
だがストリームはもうそこにはいなかった、すでに別方向へ移動していた。

「逃がさない……!」

対艦刀を収納しストリームの後を追った。
熱源モニターが示す場所へ到達したが、そこにストリームの姿は無かった。
上にも注意を払った。だが上にもその姿は確認できない。
それ以外の場所、それは


「………した!?」


アロナの足元のの道路に亀裂が入り光が漏れ出していた。
すぐさまバックステップでその場から離れる。同時にその場所はビームで吹き飛んでいた。

ストリームはその場の地下通路から抜け出し、そのままビルの上に降り立つ。
真上に飛んでいったビームは地表へと到達しまた地表の光が地下都市を照らし出す。
今度の穴は非常に大きいものだった。アルナも全力でバーニアを噴かし振ってくる岩石を回避していた。

「……このッ!!」

対艦刀を抜刀しビルの上のストリームに切りかかる。
2本の対艦刀を同時に振り下ろす。だが対艦刀は空を切りビルの屋上を切り伏せる。
アルナが確認したストリームは太陽の逆行に照らされたシルエットの姿だった。
振り切った対艦刀の遠心力で1回転した後、再びストリームへと切りかかる。
連撃とも呼べる、多段攻撃を仕掛ける、しかしどれも寸前のところで回避されてしまう。
回避していく中でアルナに一瞬の隙が生まれた。その瞬間にストリームは脚部でゲイツを蹴り下げた。
機体の制御が失われ落下しながら右腕のロケットアンカーを射出する。
だがアレスター改は切り払われたが、何とかバランスを取り戻しビルに着地する。



『強い…だが未熟!』



背部のビーム砲が展開し、砲門が収束モードにセットアップされる。

アルナだけではなかった、この地下都市にいる全ての人間が真上から殺気を感じ取っていた。



『………同士よ、我も後から逝く…!』



光が全ての砲門へと収束していった。核エンジン搭載機にチャージアップなどさほどかかる筈も無い。

膨大なエネルギーが蓄積され、今。




『この空間と共に消し飛べ!!!!』




――――――放たれるのだった。




≪FINAL-PHASE(後編)へ続く≫