PHASE-03
ルークという人間は「信念」という概念を正確に持たない。
いや、彼自身それはあったのだろう、だが自分でも理解していなかったのだろう。
自分自身が戦う理由を、その意味を。
人も殺した、だが深き意味は無い。本来その行動自信意味は無いのかもしれない。
「敵」である以上、その相手のことを知っているわけでもない。
力あるものは冷酷にも憤怒することもなく、ただトリガーを引くだけで相手の命を奪うことが出来る。
「敵がいなければ自分にとって有利だ」と思っていれば良い。
その相手が今まで生きてきたすべてを否定して。
ただそれが信念か名誉か、それとも別の何かが人を駆り立たせる。
”信念を持つ敵”に出会ったとき、ルークは何を知り、何を否定されたのだろう。
無駄であると分かっていても争いを繰り返す。
その結果が何を生もうとも。その憎悪は果てしなく、宇宙を染めていく。
ルーク自信は「戦争が終わった」という実感はあまり無かった。
休戦の宣言はなされた、だがその場にいる兵達の気が収まるわけではない。
過激派は独断で地球軍に攻撃を仕掛けていた。
「ナチュラルを滅ぼす」
という信念を持って。
すぐに過激派は本隊からの弾圧を受けた。
だが数名のパイロットが機体を強奪し、地球へ向かったという。
目標はワシントンであろう、戦争で浪費した両軍が上手く動けない現在は彼らにとって好機だったのだろう。
攻防戦を生き残った特務隊ルーク・ラントフォルドに与えられた任務は彼らを止めること。
ただし
「脱走兵の生死は問わない」
という記述があった。つまり殺してでも止めなければならないということだ。
そうしなければ再び戦争が始まってしまう。
人間という生き物は何か口実をつけて問題を起こそうとするからだろう。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
〜9月29日 ザフト軍 カーペンタリア基地〜
連合の「八・八作戦」の悲惨な被害がいまだ消えない。
ストライクダガーやディン、まだその残骸が基地のいたるところで確認できた。
その作戦でこの基地は陥落しなかった、だがその機能はほとんど失われていた。
あくまで今回ここにいるのは一番近い場所だからという理由だけだった。
脱走兵は既に大西洋連邦の領域下、アラスカに潜入したという。
サイクロプスによって崩壊し、アラスカは使い物にならないほどに破壊されていた。
残された数少ない基地を占拠し潜伏中だという。
「ミッション内容を説明する」
臨時の指揮官からの声だった。
「これから我々は太平洋を横断後、地球連合軍の領域内に潜伏する脱走兵を捕獲する。
大西洋連邦も協力してくれるそうだ、だがあちらさんの増援には気をつけろよ。
偏見を持ったやつらが後ろから撃ってくるかもしれないからな。
我々が行動できるエリアは限られている。過激派が支度を済ませる前に捕獲する
なお、脱走兵は新型機、"ZGMF-1017AS ジンアサルト"と"ZGMF-515AS シグーアサルト"
そして"ZGMF-X04A ストリーム"の合計3機を強奪している。
こちらは特務隊4人でミッションに望む。それでは各員、準備をしておけ」
………
……
…
と、説明された。いまいち分からないね。今はとりあえず移動中らしいが。
オレみたいなバカな子にはホントに分からんね。
せっかく焼肉パーティだとも思ってみたんだがそう世の中甘くないみたいだ。
つーか…オレはゲイツかよ、ヤキン攻防戦になってもジェネレートは直らなかった。
だからゲイツでひーこら言いながら生き残ったわけよ。
自分で自分に勲章をあげたいくらいだ、だってアレだぜ?
ジャスティスのドデカビームソードを受け流したんだぜ?受け流しただけだけど。
その代わり左腕が全部持ってかれたんだけどな。
ジェネレートは一応今MSデッキにあるぜ。まだ調整中でもちろんソフィア込み。
一体何を仕込んでいるのやら、そのせいでオレはゲイツしか乗れてないわけで。
今更だがザフトも連合も浪費しまくってるのにこんな騒ぎを起こすなんて。
これ以上状況を悪化させないためにオレ含む特務隊4人がフル増員。
そして何故かオレが小隊長、お偉いさんは一体何を考えているのやら
で、そのオレ以外の3人なんだけど。
えーーーーっと……悪い、名前忘れたや。右から機体と一緒にどうぞ
「ケビン・バルサージュ、搭乗機はディンレイヴン。ひどいな、俺の顔を忘れるとは」
そうか、ケビンはスクールの同期だったな。ごめんよ、こんど一杯どうよ?
じゃあ、次の金髪のあなた。
「アロエ・デアナル、18歳。機体はブリッツアサルトシュラウド、ていうか私も同期なんだけど?」
…ごめんなさい、本当ごめんなさい。
ブリッツってレプリカの?………あ!ジェネレートの試験にいたのお前!
そうかそうだったのか。気付くの遅いなぁオレ。
どうも記憶力が足りないなぁ。
「…アルナ・ジェニファー、機体はわたし専用ゲイツ」
ん………そうだ!1期下の下級生だったっけ。
何回かスクールで見たことあるよ。
あれ、君もいたんだ。ジェネレートの模擬戦。ゲイツに乗ってた?
そうかオレがリフター切断したやつ……ご、ごめんなさい!
ってほとんど、てか全部子供じゃない。世の中末だね。
オレみたいなのばっか働いて……ツッコミ出したらキリが無いか。
「はぁ、ルーク。お前の趣味が女装だったとは…同期として嘆かわしい」
「あ、私も見たよ!けっこう可愛かったよ!!」
うっ!お前らさっさと忘れろ、そしてあのサイトには行くな。頼む。
そ、そうだこの仕事が終わったら焼肉行こうぜ!ソフィアとか同期連れてさ!
頑張ってるんだからそのぐらいの休暇をとってもいいはずだし!な!?
どうなんだ、ケビンにアロエにアルナ!!
「そうだな、俺は別に異議は無い」
「私もかまわないよー!」
「………別に…」
じゃあ決定な。さっさとこの仕事を終わらせて帰る!
それが今のオレの第一目標だ!
意気込んでいたら時間だ。もうちょっと話してたいな。
まぁしょうがない、仕事だしね。
みんなノーマルスーツに着替えていたから機体への登場はスムーズだった。
地上戦っていうのも実は初めてなんだよ。だから正直不安なのは、ここだけの秘密。
いちようオレのゲイツも地上用にいろいろいじっといたけど、接地圧の設定とか。
『作戦概要を説明する。敵はデータ上サイクロプスで崩壊した地下都市に潜伏中とのことだ
言い換えてしまえば市街地戦だ。それではよろしく頼むぞ』
適当に言われて通信は終了した。
そうだそうだ、ソフィア。全然話聞いてないや。
『何よ?』
「いやさぁ、隣にジェネレートがあるのになんでそれに乗れないんだ?」
『企業秘密よ、もしものときの、ってヤツかな』
「…じゃあもう聞きません」
『それじゃあね』
プツン
なんかこの頃あいつ冷たいな。なんか悪いことしたっけ?
そんな覚えは俺には無いわけで………まぁいいや。
さっさと仕事を終わらせよう。グゥルとの連動プログラムっと…
だがこの時、オレはまだ知らなかった。
今から戦うそいつらの「信念」というヤツを。
≪PHASE-04へ続く≫
|