PHASE-02
〜プラント首都 アプリリウス 基地内モーニングカフェ〜。
「で、何?こんな朝から。せっかく気持ちよく寝てたのに。コーヒーずずず…あぁ、効く。目が覚める…」
「ルーク的にはうれしいお知らせといやなお知らせがあるけどぉ?」
「う…じゃあうれしい方から」
こーやって軍に入ってからの天上天下唯我独尊の幼馴染と飯を一緒にするのも何十回目か。最終的に損するのはオレなんだけどな。
あ、このコーヒー、ミルクが足りねぇ。
「ルーちゃんは今日から晴れて"特務隊"の一員で〜す。おっめでとぉ〜」
「特務隊?誰の指揮下?」
「基本的に自由よ?特殊な指揮系統だから本部直轄なの。今より権限は大きくなるわよ?ま、私には意味無いケド」
「うッ! てめ、絶対どうにかしてやる……で、悪い方は……?」
「あのね、この前ZGMF-X10A強奪事件があったじゃない?」
「ああ、クライン派がどうとか。あ、このワッフル美味い」
「それで、そのフリーダムが大気圏近くで確認されたの。後は分かるわよね?X09Aは地上だし…」
「オレに奪還して来いと?1人でか?」
「そんなに酷くないわよぅ。フェンサー隊とヨルブ隊との共同作戦よ」
「ふーん」
「ちなみに、連合の足つきとオーブ系統の宇宙艦が一緒に確認されてるから注意してね?」
「荷が重い…ホントに荷が重いな…!?」
「先回りして奪還だってさ、それじゃヨロシク〜〜。あ、これから即売会あるからじゃね〜〜〜。お〜ば〜」
「あッ待てよ!またか!またなのか!?え?120ドル?高!じゃ、はい、クレジットカード。くそぉ!ボーナスがぁッ!」
〜数時間後、L4付近宙域 ナスカ級 ブリーフィングルーム〜
こうしてオレは任務に就いた。発進してから2,3時間。フェンサー隊の艦にジェネレートごと乗せてもらってる。
見知らぬ(写真の件での顔見知りも多少いるわけだが)人間と行動を共にする。ってのも微妙な気分だ。
なんせ"浮いてる"からな。信頼されてないっていうのはツライね。
やることも無いからブリーフィングルームでドリンクでもすすってる真っ最中。
接触予定ポイントまで1時間…40分ぐらいで対象にも捕捉されるか。
…ん?耐圧ガラスの先には収納されたモビルスーツデッキが見えるわけだが。
どっかで見いたことあるんだよな…あの後姿……
あ!
オレが誰を見たかって?そりゃあ1人しかいないだろう。それにあのピンク色の髪の毛は…ッ!
ソ フ ィ ア だ !
何故?何故乗ってる。あいつは別任務が何とかで今回は作戦に参加してないはずだ。
メンバーリストにだってあいつの名前は……とりあえずすぐにあっちから見えない場所に避難。
我ながら妥当な判断だ。深呼吸深呼吸。あー落ち着けオレ。
「ルーちゃーん?」
「ひあぁぁぁぁぁッ!?」
後ろに振り向いたオレの悲鳴と同時にシャッター音。
デッキから直結するエレベーターから現れたのは、期待を裏切らずソフィアだった。って!
「いつの間に?」
「ルーク。私が"何で乗ってるか"って思ってるでしょ?」
これも期待に反することなく、俺が思ってたことを言ってきやがった。鬼め。
「ジェネレートの調整のために、緊急参加しちゃった。喜びなさい!核エンジンの調整よ!」
「じゃ、じゃあ落ちないのか?」
「ちょーーーっと…自信ない」
エエエエェェ(´Д`)ェェエエエエ <そんな自信気に言ってて!?
「前のをダウン可能性70%とすると……今のは75%くらいカナ〜?」
いや待て、強奪されたX10Aも。それ以前にX04Aから核エンジンは正常なんだろ?
だから説明してくれ、YMF-X000Aのエンジンも完璧だったんだろ?
後期型のがなんで不完全なんだよ!?
「あー説明するのがめんどいわね…不完全とかいう問題じゃなくて、Nジャマーキャンセラーの問題よ」
反論するまもなく続けて説明が入る。
「知らないと思うけど、NJCの製造にはと〜〜〜っても貴重な"レアメタル"が必要になるのよ。それ―――」
これ以降のうんちくを聞こうか、やめようか判断に迷った時艦内にアラートが鳴り響いた。
『緊急発令、連合軍を捕捉これより殲滅する』
みたいな内容のアナウンスが入る。れんごー?マジで?
「悪い、その話はまた今度、調整出来てるよな?ジェネレート」
エレベーターに乗る込みながら聞いてみる。返答はもちろんOKだった。
緊急ってホントにイヤなんだよね。心臓に悪い。幸いスーツのままでブリーフィングルームにいたから一番乗りだ。
腹部のハッチに乗り込む。ハッチを閉めてOSを起動した。
緊急な状態だから敵を殲滅する。としか説明されなかった。渡る世間は鬼ばかりだ。
「ルーク・ラントフォルド。X01A、行きます!」
リニアカタパルトから射出され加速。外に出るとすぐにレーダーが敵を捕捉してくれた。
敵はストライクダガーが今のところ5機。もうお構い無しにビーム打ってきやがる。
もうちょっと正確にロックオンしてからビームは撃つもんだ。
俺の打ったビームは確実にダガーの右腕を打ち抜く。
OSの問題か、敵は姿勢制御で時間を食っている。儲けモンだな。
そら、もう一発…あれ防御された。しょうがない…やっちゃるぜ。
ペダルをおもいっきり踏んでやった。ジェネレートのバーニアが火を噴く。
毎度毎度、けっこうな加速だ。もう慣れたんで吐き気は無いけどな。
シールドのビームソードをドライブさせる。スラスターで姿勢を調整しながら操縦桿を前に倒す。
ジェネレートは素直だ、敵を過ぎ去ったときには後ろで爆発が起きている。あっけないもんだ。殺人ってあんまり気分よくないね。
オレが他のダガーからのビームを回避した頃にはもう味方も敵も援護に来ていた。
ん?一機だけ熱紋が違う。あの一番後ろにいるやつか。あいつを堕とせば士気だって下がるだろう。
すまないけど堕ちてもらう。
接近していくと敵がどんな姿をしているかよく分かる。デカい対艦刀を2本担いでる。
本体の見た目はストライクダガーと大差ないけど、データに無い当たり新型か。
後ろのは…ストライカーパックか。ジェネレートにも使われたデータのGAT-X105のデータ流用か。
なんて自分考察を考えていると、そのMSはなんか2つ投げてきた。けっこう回転してる。
あれは…ビームブーメランか。回避、回避、回避!!って対艦刀持って突撃してきやがる。
近接戦はこっちが不利だ。距離を取って…と。機動性はこっちのほうが上か。
角度的にもブーメランの返りは当たらない。ANBACしながら"バラエーナ"を放つ。
避けた。こいつの反応速度。おかしい……ナチュラルがこんなに反応できるはずが無い。
コーディネイターが乗ってるのか?そう考えないと…
距離を保ちつつビームライフルでけん制する。だがジェネレートのビームは相手を打ち抜けねぇ。
あの野郎、シールドで防御したな。発光してる辺りラミネート装甲か。
アラート。うるさい警報は背後を示していた。ストライクダガーだ。
味方は何を…って3分の1ぐらいやられてるじゃん。またやられやがった。
くそ…残ってるのは……オレ、隊長機2機、その他が4機…
それに比べて相手は8機…圧倒的に不利だ。こんな状況でX10A奪還なんて無理。それ以前の問題だがな。
右から飛んできた光を防御。そのビームを弾くとシールドが赤く悲鳴を上げる。
少しビームを受けすぎたみたい、耐久度が下がってやがる。
やっぱりこのダガーが厄介だ。指揮官も優秀だな、戦略がきっちり練れてやがる。
こっちもそんぐらいしてくれればいいのに、まったく…いつも苦労するのはオレだ。
射撃戦では倒せないか…あのビームの対艦刀にさえ気を配れば勝機はある。
オレは接近していく。やつの対艦刀の振りを回避した。つもりだったがシールドがオジャンだ。
どうやらアンカーのワイヤー部は無事だ、ついでのそれを射出するが切り裂かれていた。シールド排除。
ビームライフルと「バラエーナ」を連射する。エンジンへの負担は増えるが、相手のラミネートシールドを排除するにはこうするしかなかった。
結構近い距離だ、こっちの行動を捕捉したときにはもう遅い。予想道理それを防御してくれた、相手のシールドも爆散する。
対艦刀ダガーは爆風なんぞ気にせずにこっちに接近する。破片とか気にすれば良いのに。
カタをつけるつもりなのかは知らんが、ビームなんぞお構い無しに突っ込んでくる。きっちり避けてるんだけどな。
しょうがない、この賭けに乗らせてもらうことにしよう。分が悪いが、そんな賭けは好きなほうだ!!
オレもライフルを投げ捨てる、マウントする時間など無い。ビームサーベルに2本とも出力し、バーニアを噴く。
相手と接触する数秒前、コクピットから別のアラートを鳴らしていた。
後々考えれば、この時注意していれば良かったとしみじみ思う。
事が終わったときには、ジェネレートの左腿から下、左腕全部が本体とサヨナラして爆発していた。
だが、やられるだけじゃない。相手のビームを出す対艦刀と右腕をぶった切ってやった。
やっぱり反応速度ではジェネレートのほうが上だったわけだ。
だが、このまま放置するわけにも行かない、こいつの白兵戦での恐ろしさは俺が一番良くわかってるつもりだ。
相手も抵抗してきた。バルカン砲を発射してくるがPS装甲にはそんなもの効かない。弾の無駄だ。
そのデカイのだって言ってしまえばただの実体剣だ、無駄無駄。覚悟を決めてもらおう。
その瞬間、オレは何が起きたのか分からなかった。ジェネレートが激しく揺れる。
衝撃から逃げ出せずに、メインモニターを見る。太陽の光に何かがいた。逆行で良く見えない。
だがOSはきちんと理解していたようだ。すぐに俺に報告してくれる。「TARGET ZGMF-X10A」と。
「あれが…フリーダム!!」
叫んだ、さらなる衝撃が俺に伝わりモニターが暗闇につつまれる。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
また叫んでしまった。コクピットは赤い緊急照明で染められていた。
ここでオレの記憶は途切れている。
気を取り戻したのは10分後ぐらい経過してからのことだった。
OSは起動していた様で、生命維持装置もなんら問題は無い。
欠陥エンジンも落ちちゃいない。今日は運が良いね。ついでに被害状況を調た。
「右肩を除く両腕、右足、頭部消失……とりあえずサブカメラを起動させないと…」
サブカメラに映し出された映像にオレは驚く。敵も味方も、まとめて武装のみが破壊されていた。
モニターの端に地球軍の艦が信号弾を撃っていた。武装を奪われた敵のMSも撤退していく。
あの対艦刀ダガーもそうだ。対艦刀と両腕と両足首を失っているのが分かる。
こっちのナスカ級も同じだった。どちらも戦闘を継続できるような状況じゃない。
オレなんか推進力の7割方を失っていた、味方の助けが無ければどうしようもない。
救難信号を出す。ふと力が抜け、シートに背中を乗せる。
「フリーダム……武装だけを破壊するなんて……なんちゅう野郎だ。バケモノか?」
また数分後、味方の救助隊の俺は拾われた。ジェネレートは修理に送られた。ソフィアも一緒にな。
本国に帰還したオレは臨時で指揮官用ゲイツを与えられた、ちなみにオレは今でも特務隊のままだ。
普通ここは激怒するところだろうな。
だけどオレは何故か安心していた。多分、オレが作り上げたデータがフリーダムに流用されてた。
それを考えると何か嬉しくなる。それに自分がやられたなんて皮肉だけど別にかまやしなかった。
あぁ、オレも変人なんだな。パイロット辞めて開発部にでも移ろうかなぁ。
・L4での足つき級1隻とイズモ級1隻、そしてフリーダムの発見。
・シーゲル・クラインの死亡。
・ザラ議長の息子が反旗を翻し新造艦とX09Aを強奪。
・特務隊グレイがX11Aでのクライン嬢の捜索を開始。
オレがこの報告を全部聞いたのは、この作戦が終了した1,2週間後のことだった。
≪PHASE-03へ続く≫
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