Epilogue -ROMANCE DAWN- それから・・・

「フンっ!他愛の無い。これでは腕が訛って訛って仕方が無いではないかっ!!」
「・・・フム。同感也。これでは”共同戦線を張る”必要も皆無であったやも知れぬな。」

シャライとブルースは退屈そうにつぶやきながら次々と迫り来る”ウィンダムの群れ”を落としてゆく。


そこは最果ての地、アイスランド―
”ロゴス”の本拠地ともいえる地球連合軍の大規模基地、”ヘブンズベース”のある小大陸である。


「あ〜あ、はりきってるなぁ。シャライくんも、ブルースくんも。」

前線での2人の活躍にアムルは一人ニッコリと微笑みながら、先ほど途中まで書いた手紙の事を思い出していた。

その書き出しはこうである。






ティエンとアロイス。彼らのその後はどうなったのかと言うと・・・。

基地内にも死傷者が出た事もあり、やはりアロイスの厳罰は免れる事は無かった。

そして、不可抗力とは言え公式なロールアウト前のアウローラを再起不能状態にさせ、その上当時の基地統括であるスパンディアに対して殺人未遂を図ったティエンも、同じく厳罰される事となったのだ。
魁龍クワイロン”のメンバーの必死の嘆願も空しく、その処罰は免れなかった。


アロイス・ローゼン曹長
ライ・ティエン曹長

上記の両名は、地球連合軍懲戒免職。


それが2人に下された処分だった。どうやら、ロンファンの最大限の根回しのおかげでかなりの減刑が図られたらしい。
いや、懲戒免職と言うよりもその存在があった事すら、連合軍の書面から完全に消されてしまったのである。


ティエンとアロイスは、最初から東アジア共和国に・・・”魁龍クワイロン”には存在しなかった。


厳罰を帳消しにする代償として、そういう形式で処理されたのだった。
勿論、暫くの間は軍の厳重な保護観察付きという限定があり、連合軍内のブラックリストにはしっかりと2人の名前が載っているのではあるが・・・。


魁龍クワイロン”のメンバーは、心にぽっかりと大きな穴が開いてしまったかのように暫くは気落ちしていたようだが、2人の抜けた穴を埋めようと、今では以前以上に気を引き締めているようだった。





アムルの新型の愛機、フォビドゥンヴォーテクス”アンフィトリテ”の隣に立っていた”桃色をしたモノアイの機体”が、彼女を押しのけるかのようにしてブルース達が突き進む前線での戦闘参加に名乗りを上げる。

「熱いッ、熱いゼ!お前達!!!オレだって負けてはいられないな。待ってろよ、今からこのオレが・・・ここん所よく聞け、お前達という熱き血潮の仲間が加わったこの”新生アルフォード隊”隊長、ゼーヤ・アルフォードが!!加勢するぜッ!!!」

桃色のグフイグナイテッドが、ワイルドダガーとランチャーウィンダムの元へと一直線に飛んでゆく。

「貴様ァ!!!誰が”新生アルフォード隊”なものかっ、この無礼者っ!!」
「左様。我等は”魁龍クワイロン”。暑苦しき者の部下に非ず。」

「バッキャロウ!!そう水臭いことを言うな、お前達!!
オレ達の熱き力で、今こそ”ロゴス”を討つッッ!!!うぉぉぉ、見てて下さい、ラクス様―――!!!」

心の足並みはいまいちずれてはいるものの、3機は怒涛の勢いだ。



そして、今、”魁龍クワイロン”はゼーヤ率いる”新生アルフォード隊”と共に、ヘブンズベースの一角に攻撃をかけているのであった。

ニコニコとその姿を見つめるアムルにブルーカラーのアッシュ、ライア・エリシュが通信を入れる。

「おい、ボサっとしてんじゃないよ、”レーダー娘”!!あたしらもそろそろ海ン中に行くよ?・・・あんたと一緒ってのが癪だけど、あんた、”癪に障るほどに強い”から、期待してんだからね!?」

「わかってますよぉ。今度は私も”ガンダム”だし!
よ〜し、行きましょ!!ライア”お・ば・さ・ん”?」

「おば・・・!あ・・・あんたぁ!!!さっきからその語尾の部分わざと強調して言ってんだろ、この性悪娘がぁぁぁ!!!!」
「えへへ、じゃあ、おっさき〜〜☆」

そんな冗談を言い合いながら、アムルとライアも海中へとその闘いに赴く。
今正に、ヘブンズベースの攻防は佳境を迎えているのであった。

そんな中、アムルはふと思う。
書き途中のあの手紙にも、この”魁龍クワイロン”の戦いの事を書いて送ろうと。
そして・・・その締め括りも勿論既に決めていた。


***




「・・・アムルさんらしいや。」

手紙を一読したティエンは真っ白に固まりながらそう苦笑する。
しかし、仲間達が元気でやっていると言う知らせを聞く事ができて、内心ほっとしているようだ。
・・・ほんの短い間の仲間ではあったが、彼らと過ごした時間はティエンにとってはとても深く、とても濃厚なものであったのだから。

「・・・ま、いっか。今度遊びに来てくれるって、書いてあるしね。」
「フフ・・じゃあ、支払いはティエン持ちという事で、よろしく。」

ティエンの隣で一緒にその手紙を読んでいた銀髪の少年が、悪戯にそう微笑する。

「そ、そんなぁ。そりゃないよ、アロイス!僕より君の方が”給料いい”んだからさー!」
「それとこれとは別の話さ、ティエン。
なんなら君も”オペレーターを兼任”すればいいだろう?”テストパイロット”だけではなくてさ?」

そんな事が士官学校で基礎的なMS工学を修めただけのナチュラルである今のティエンに出来るはずがない事を知っていながら、アロイスはいじめるように提案した。
ティエンはぷくーっと両頬を膨らまして、意を決したように右拳を突き上げる。

「よーし、じゃあ決めた!!僕もこれからこの”フジヤマ社”で勤めながらMS工学の勉強して、絶対にアロイス以上の知識、身につけてやるもんね!」
「フフフ、面白い。受けて立とうじゃないか?・・・でも、その前に今日の”仕事”に行こうか。今日は、”2号機”の復元完成の日だ。”また君が乗って”一からテストするんだろう?
早く行かないと”主任”に怒られてしまうよ。」

そう、ティエンとアロイスは軍を抜けた後、フジヤマ社に拾ってもらったのだった。
ティエンはテストパイロットとして。
そして、アロイスはオペレーターも兼任していた。
勿論、その立役者とは・・・


「コラ! 2人とも、まだそんな所にいたの!?もう。早く来ないと、本当に怒るよ?」


2人を漸く見つけたその白衣を着た女性が、ティエンとよく似たその頬を少しだけ膨らませて拳骨をつくって見せる。
彼らの”直属の上司”、シンシア・L・オルビスであった。
その胸元には、銀色のネックレスが人知れず美しく輝いている。

その声にギクリとしたティエンとアロイスは、お互いの顔をさっと見合わせて直ぐ様返事を返す。

「す、すみません。シンシアさん!」
「い、今すぐ行くよっ、姉さん!!」

それぞれの思いを胸にバラバラになっていたその3人は、今では常に一緒であった。
戦争の悲劇を受けて気負いすぎ、大切な物を守るためにまず大きな力に頼る事に走ってしまっていた彼らは、漸く気付いたのだ。


・・・自分の一番側にいる大切な人と共に過ごせる時間を守る事こそが、何よりも大切な事だったのだ、と。
そして自分一人だけの力では、人は生きてゆく事も強くなることも出来ないという事を改めて知ったのだった。


そう、彼らの物語はまだ冒険の夜明けロマンスドーンを迎えたばかり。
そのもう一つの王道無き物語は、正にこれから始まるのだ。


そんな3人の想いで紡がれたその東アジアの”ガンダム”が、後世の歴史に名を馳せる事はないかもしれない。
そして、殆どの者は知る事すらもないだろう。

しかし、あの日、高雄の大地でティエン達を暖かく照らしていたあの大いなる東亞の黎明はその事を決して忘れはしない。

この時代のどこかに・・・
東アジアの大地で生まれた守護神、”東アジアガンダム”という名のMSの姿があったという事を・・・。


≪−東亞の黎明− 〜完〜≫







[あとがき]

ブラオバウムです。

さて、ついに完結いたしました^^
‐東亞の黎明‐に最後まで付き合っていただいた皆様、ほんとうにありがとうございましたm(_ _)m
・・・一話一話が長いから、最終的にはSSと言うか長編小説風の長さになっていますね^^;

本当は、戦争と言う時代背景に呑まれながらも、一心に何かを守るために前に進もうとするキャラクター達の人間ドラマを描き出したかったのですが・・・難しかったようです><;;
ロンファン、シャライ以外の仲間達のテーマへの絡ませ方も弱かった気がします^^;

そして、ちょっと詰め込みすぎてごちゃついた感じは否めません^^;
文量が多いし、テンポも悪い^^;;


「あー、もう・・・ダメダメです。」


というアズラエル理事のお声が聞こえてきます(笑)
改めて読み直してみると反省の余地ばかりが残りますが><;;、無事公開終了できてほっとしている所です。

私のSSはこれにて終了ですが、AASコーナーは勿論の事変わらず続けてゆきますので今後とも当サイトをよろしくお願いしますね^^

それでは、ここまでのSS、あとがきを含めまして、長文・乱文失礼致しました。


また、あまり必要性も要望もないとは思ったのですが、設定などの製作秘話も別項目に記念として載せてみましたのでご興味のある方は覗いて見てください。
RS装甲の解説や調べていた東アジア共和国のデータ等も載っておりますので^^
とは言いましても、製作秘話は正に自己満足の祭典ですのであしからず^^;;;

≪製作秘話へ≫