PHASE-03 −JUDAS− 背徳者
仄かな光に照らし出された朧なる影が2つ。
おもむろにその片割れから一声が切り出される。
「それで、この話はもうどうにもならん・・・そういう事かの。スパンディア?」
そのしゃがれた声の主は、”魁龍”隊長、リゥ・ロンファンである。
そして、この場所は別に星なき闇夜の屋外でもなければ、暗く冷たい牢獄の中であるというわけでもない。
東アジア共和国 高雄 統括司令室であった。
真昼だと言うのにもかかわらずブラインドまで締め切ったその薄暗い空間は、話し合いをするにしてはいささか暗すぎて不快だ。
しかし、その部屋の主は明かりを大きく点灯させようともしない。
あたかも『長々と話をするつもりはない』と訴えかけているかのようにも見えた。
スパンディアと呼ばれたその男はアンティーク調の大きなイスに深く腰を落とし、イスと合わせてコーディネイトされたのであろう古びた木製のデスクの上に両肘をつく。
薄暗い部屋の中だというのにその顔には大きなバイザーグラスがかけられており、頭には地球連合軍の高等士官の証たる軍帽を深く被っていた。
彼がこの高雄基地統括司令、スパンディア・エルディーニ大佐その人である。
「何事かと思えば、またその話ですか・・・。それは既に上が下した決定事項である・・・と以前にも申したはずですが、老師。
・・・時に、”魁龍”チームにお任せしたあの2機の性能試験の方は、順調なのですかな?
なにやら、態々士官学校を出たばかりの新兵を入隊させた挙句、テストパイロットに起用したとか。
そちらの方が私には遥かに心配ですがね。それとも、それも”機人”の御目による策なのですかな?」
淡々と返すスパンディアの表情は大きなバイザーグラスによって遮られているためにその感情を読み取る事は難しい。
しかし、言葉の端々に話を歯牙にもかけないというその感情を取って見たロンファンは、コツ!と大きく老木の杖を床に突き、話を変えさせまいとする。
「・・・フン!順調に決まっておろう。話をはぐらかせようとしているのが目に見え取るぞ、スパンディア。
お前さん、事の重大さがわかっとるのか?アレを使用する事が・・・一体どれほどの意味を持つのかという事を。」
「しかし、現実には既に”再び使ってしまっている”でしょう?我が軍は。」
「それが浅はかな考え方じゃと言うに!!大西洋の・・・ブルーコスモスの奴等にいい様に使われるとるだけなのがわからんのか!!」
ロンファンの説得は次第に熱を帯び始める。
スパンディアは飽くまでもその冷静たる姿勢を崩す事はなかったが、深くため息をついて”本心を語るかのように”しながら、抜け抜けと口にした。
「・・・私とて、本当は止めたいものです。
いえ、上層部の人間とて、それを快くは思っていない人間ばかりなのですよ、実際は。
しかし、我々は『地球連合軍』に属する一国家に過ぎない。
自国開発の巨大MSを西ヨーロッパにまで派遣して前線で戦っている大西洋や、ユーラシア等の連合内で高い勢力を持つ他国に面目を立てる上では、最早断りきれなかったのでしょう。
かの中立国オーブとて一度は友軍として動いたと言うのに、我らだけ安穏としている訳には行かないのでしょうな。
この狂気ともいえる連合軍の勢いも、あの事件が起きてしまった以上、半分は仕方のない事と思わざるを得ないが・・・。」
「・・・ブレイク・ザ・ワールド・・・かの。」
スパンディアは黙ってそれに頷く。
「・・・もう、我が国は、いえ、今の地球連合軍は、私程度の権限では最早どうにもならない程の泥沼にその両足を自ら進んで浸けようとしている。そう、”憎しみの連鎖”という名の沼地の中にです。
そんな世界を変えたいと願い、貴方が言ってくれたように私は上を目指してきた。漸く大佐の地位まで登り、軍本部の一角を任されるほどになったというのに・・・それすら全く意味を持たない事であるなんて。
上に行き、上を知れば知るほどに、己の無力さを痛感させられる事ばかりですね。」
椅子をくるりと回して俯きながら背を向けるスパンディアに対して、ロンファンは最早それ以上何も言わなかった。
振返り部屋を出ようとしたロンファンは、背を向けたままでその足を止める。
「・・・よく理解した。それならば、最早わしも何も言わん。今までは”教え子”であるお前さんの顔を立てて傍観してきたが、わしは”わしのやり方”で事に当たるまでじゃ。お前さんはお前さんの今出来る事を成すがよい。
・・・”機人の弟子”なれば、その意地を見せてみい。スパンディアよ。」
「心得ておきましょう。・・・若しや、ではありますが、”これから、お出掛けになる”のですかな?」
「・・・・・・。明日には戻るわい。よいな?」
そう言って部屋を出るロンファンの姿を見送りながら、スパンディアはそのバイザーグラスをさも鬱陶しそうに乱暴にはずして投げ捨て、その双眸をキっと引き締めた。
「フン。事あるごとに目障りな。
・・・ロンファン先生。貴方が士官学校時代からの私の恩師である事には変わりない。だが、今の私にとっては正に目の上のタンコブ。良策を邪魔する厄介な存在に過ぎないのですよ。・・・上に呼び戻されただかなんだか知らんが、全く持って忌々しい。
私は貴方とは違う。
貴方のように単に”機”を傍観しているのではなく、自らの手で”好機”を作りだし、大きく、大きく、育てようとしているのだ。より高みに行くための”
好機”を、ね・・・ククク。」
その薄暗がりの司令室に、スパンディアの不敵な笑い声だけが静かに響いた。
***
「・・・でー、この部分はとっても繊細な部分みたいだから、ティエン君は最初はあんましいじんない方がいいかも。
地形とか気候によって、機体バランサーとか色々微調整してくれるみたいだし。」
アムルはティエンの愛機となったアウローラのコクピットの中に入り、ティエンにOS調整の手ほどきをしていた。
アムルは見かけによらず何にでも対応できる器用さをもっているのだ。
あのアウローラ適性試験から数日が経っており、アウローラとドグーの様々なデータを取るための簡単な運用試験が既に始まっていた。
当然ながら2機のパイロットであるアムルとティエンが行動を共にする事も多く、先輩であるアムルがなんだかんだと言いながらもティエンに色々なアドバイスをしてくれていたのだった。
「・・・って言うか、すっごいよね〜、このOSって。ドグーのものとはまたちょっと違うみたい。」
「へぇ〜。アムルさん、キータッチものすごい早いんですね。まるで”コーディネイターみたい”だ。」
手早くキータッチをしながらそのスペック情報を引き出すアムルのその手がピタリと止まる。
ティエンは自分が失言した事にはっとなり、平身低頭謝罪した。
「す、すみません。僕・・・・・・失礼な事言っちゃったかな。ごめんなさい。」
アムルはそんなティエンの様子を見て少し複雑そうにニッコリを微笑み、首を横に振る。
「違うの、ティエン君。・・・この事は、他の隊員のみんなはもう知ってる事なんだけど・・・。
私、実はナチュラルじゃないの。正確に言うと、ハーフナチュラル。・・・ん〜ん、ハーフコーディネイターって言う方が、わかりやすいんだろね・・・。」
そう言うと、アムルはふっと眼を伏せる。
オーブ出身のコーディネイターを父に持っていたアムルは、今までその事で様々な誤解や偏見を受けてきた。
「”コーディネイターの子と遊んではいけない”とお父さんに言われている」と友人に言われた事もあったし、「コーディネイターに売るものはない」と門前で店を締め出された事さえあった。
それでも明るく生き抜いてきたのは、彼女の決意の現れであった。
父を早くに亡くし、女手一つで自分を育ててくれた母に心配をかけたくなかったのであろう。
家にお金はなかったが、だからこそアムルは常に笑顔でいようと決めていた。
母の前でだけは幸せそうな笑顔を絶やさないでいようと・・・。
そして、アムルは軍に志願する事を決意する。
普通の職場ではハーフである事から妙な色眼鏡で見られてしまうだけだ。軍でもそれはなんら変わる事はないかもしれないが、逆にその天賦の能力を生かす事だって出来る。
それに何より、給料がいい。
アムルはお金が必要だった。
それは今まで御世話になった母に少しでも楽な生活をさせてあげたかったからであった。
そんなアムルの話に心を打たれ、ティエンはついつい涙ぐんでしまう。
家族を想う話と言うものに、霧消に弱いのだ。
僕も心からこうありたいと思うよ、姉さん。
「アムルさん、優しいんですね。大丈夫です!僕、そういうの全然気にしないし、勿論誰にも言いません。今まで通り、宜しくお願いします。あ・・・それに、僕に出来ることなら何でも言ってくださいね。」
ティエンの素直な気持ちを持ったその真摯な言葉に、アムルは満面の笑みを返す。
「ありがと、ティエン君。それじゃあ、早速・・・いいかな?」
「はい?」
「目を・・・閉じて。ティエン君。」
アムルは伏せ目がちに頬を紅潮させてティエンにそう促した。
え?え?ど、どういう事!?
ど、どうしよう。
こんな密閉した空間で・・・僕とアムルさんの2人きり・・・。
”ガンダム”と一緒に人生の春までもが到来ですか!?姉さん!!
言うとおりに目をつむるティエン。
心臓の音が、自分でもはっきり聞こえるほどにドクンドクンと波打ち、それが最高潮に達した時だった。
「ハイ、あ・げ・る☆」
ティエンの手の中に、アムルから熱い、熱い”紙切れ”が・・・紙切れ?
ティエンは意味もわからぬままに、渡された紙切れをふと覗き込み絶句する。
「この前のドリンク代(税込み)と〜、本日のOSレクチャー代(税込み)の請求書で〜っす。
”受け取ってくれて”、どうもありがとう!あ、大丈夫よ。利子なんて付けないし、今度のお給料日の時で全然いいから!」
え・・・・えーーーーーーーーーーー!!?
そりゃ無いんじゃないですか?
つか、この請求書。僕の目がおかしいのかな、姉さん。
○が一ケタ、多い・・・気が・・・。
コクピット内で真っ白に固まるティエンにアムルは「毎度!」と嬉しそうに微笑み、そそくさとその場を後にした。
「フフ、その様子だと、どうやらまた騙されて”受け取ってしまった”みたいだね、ティエン。」
そう言いながらコクピットの中を覗きこんで来たのは、オペレーターのアロイスだった。
「ア、アロイス。聞いてたの?」
「ああ、途中からだけどね。大体察しは付いていたよ。みんなやられた手口だったから、あの泣き落としは。」
この男、それを知っていて止めなかったのか・・・。
眼を細めるティエンの非難の視線を、アロイスは「ごめん、ごめん」と苦笑いしながらかわす。
「でも、彼女の話は嘘じゃあないよ。彼女は本当にハーフコーディネイターで、お母さんのために仕送りを欠かしたことはないらしい。僕はそんな彼女の事を心から尊敬しているよ。」
「うぅ・・・そう言われると、返す言葉もないなぁ・・・。はっ!!もしかしてこうやって事あるごとにお金を取ろうとするのも、もしかしてそういう事!?」
「・・・いや、それは違うと思う。単に、・・・その・・・。ほら、大量な衝動買いをする事そのものが純然たる趣味みたいな人だから、アムルさんは。」
ティエンとアロイスは苦笑いをしながらお互いの顔を見合わせた。
「・・・ああ、そうだアロイス。老師は今どこにいるか知ってるかい?」
「老師?ああ、何でも『急用ができた』だとかで南京の方へ急遽お出かけになられたみたいだよ。確か、今日は戻れないと仰っていた」
「南京・・・本国大陸の首都にかい?一体どうしたんだろう・・・いや、頼まれていたアウローラの登録記載事項の書類を記入して持ってきたんだけど。明日の定例軍議で使うんだろ?」
アロイスは「どれどれ」とその書類に一通りざっと眼を通すと、微笑を浮かべて頷いた。
「うん、書類に特に不備はないようだね。じゃあ、ティエン。僕が預かっておくよ。僕はこれからエルディーニ大佐の所にも用があるし、先に提出させてもらっておこう。
これを提出すれば、一応君は公式にアウローラのパイロットとして登録される事になるよ。明日の定例軍議にはフジヤマ社から”主任研究員の方”も来るそうだし、忙しくなりそうだね。
・・・あ、いけない。時間に遅れてしまいそうだ。それじゃ僕は行くよ、ティエン。」
そう言うと、アロイスはその場を後にした。
ティエンはドカっとコクピットのシートにもたれかかって、その顔をにやけさせる。
「僕が”ガンダム”の正式なパイロットかぁ・・・。いまだに信じられないよね、姉さん。」
ふとティエンが視線を感じてコクピットの外に目を移すと、シートでニヤニヤと惚けるティエンの顔を覗き込むように見ていた細目の男とティエンの眼が合う。
その男とは勿論・・・
「うわっ、ブルースさん!?いつからそこに・・・!?・・・また、”ナナフシ”ですか?」
「左様。・・・それにしても、ティエンよ。ニヤニヤと・・・随分と珍妙な顔也や。ククク・・・。」
ブルースはそれだけ言い残すと飛び去るように立ち去った。
・・・どこで見られているかわからないな、あの人には。
一歩間違えばストーカーだよね、姉さん。
ティエンは少しだけゾっとした。
***
太陽もすっかり落日したその日の夜−。
今宵のアジアの海原は、まるで寄せては返す鼓動を繰り返す一つの禍々しい生物であるかのように見える程に荒れ気味だ。
その母なる魔物の洋上に、丸い球状の物体が波間に浮かんでは消えを繰り返している。
その数、7つ。
それは、水陸両用の新型MSの頭部機影であった。
6機は暗殺任務や斥候任務に特化して開発されたMS、アッシュ。
そして、もう一機は・・・大きなカプセルのような物体であり、6機のアッシュが左右と後方を挟む形で誘導しているようである。
どちらにせよ言うまでも無くザフト軍のMSであり、完全に東アジア共和国の領海に入ってしまっている。
「おい、ゼーヤ!!あんた、ホントに大丈夫なんだろうね?こんな東アジアくんだりまでステルスカプセル使ってあんたの”グフ”を運んで来といて、『勘違いでした。ごめんなさい。』じゃ済まされないよ。つーか、あたしゃ、絶対済まさねぇし!」
恐らくパーソナルカラーなのだろう。マリンブルーカラーに塗装された一機のアッシュから、異形のカプセルの中に搭載されているらしいグフイグナイテッドのパイロットへ感情をむき出しにした女性の怒号が響く。
「バ、バッキャロウ!!このオレが・・・ここん所よく聞け、”SEEDを持つ者”である(自己推定)このオレが、そんなミスをするとでも思っているというのか?ライア。それこそ、笑止っ!!
それに考えてもみろ!!
熱き血潮の友情で結ばれた同志が、あの赤土の情熱大陸でオレ達の助けを待っているというのだ。うぉぉぉぉぉぉ!!どうだ、燃えてきただろう?」
その燃え盛る炎を体現したかの如き赤髪の男は、コクピット内で天井にぶつけるほどに右の拳を高々と突き上げ、涙を流しながら咆哮する。
この男こそが、この部隊、ザフト軍アルフォード隊の隊長を務める”フェイス”、ゼーヤ・アルフォードであった。
なにやら、一度だけ書店で立ち読みした学会誌で目にした”SEED”と言うものの存在を信じて止まず、自分は絶対にそれを持っていると思い込んでいるらしい。
勿論、実質”SEED”というものが一体どのようなものかは、彼にも全く分かってはいない。
ただ、ノリでそう思い込んでいるのだ。
望まぬ腐れ縁で士官学校時代からずっと行動を共にしているライア・エリシュは、その根拠のない態度にいつも通りカチンとくる。
「あんたの存在そのものが笑止なんだよっ。
大体、熱き血潮じゃ血がつながっちまってるだろうが!あんたの親戚かってんだ!?そんでもって、高雄は大陸じゃなくて東アジアの離島だろっ!!
あたしゃ、そういういい加減なあんたの掴んだその情報が、一体どこからの物かって聞いてんの!この唐変木!!」
短気な性格である彼女だが、決して短絡的と言うわけではなく、むしろ至って優秀で緻密な計画性を持ったゼーヤの副官である。
ゼーヤがフェイスになることが出来たのも彼の戦闘能力の賜物だけではなく、ライアの戦力・戦略両面における絶妙なサポートがあってこそであった。
それ故に、ライアは今回の作戦が不安で不安で仕方がない。
何しろ今回の作戦の立案は、ライアではなくゼーヤ本人なのだから。
「大丈夫だライア。今回の作戦はな、オレが女神から・・・ここん所よく聞け、オレがあの親愛なるラクス様から直々に仰せ仕ったのだ!」
「なんだって!?どういう事だい?!」
突然ラクス・クラインの名前が出てきた事に、驚きを隠せないライア。
他の部下達もゴクリと唾を飲んでゼーヤの話に耳を傾ける。
「ふふふ、よく聞け!この前の『ラクス様慰問コンサートINディオキア』の会場でなっ!”最前列にいたオレ”にラクス様はこう仰ったのだ!!!
『みなさ〜〜〜ん、これからもザフトのために頑張ってくださいね〜〜〜!』
となッ!!!」
「言ってやったゼ」とその余韻を楽しむかのように得意げに笑うゼーヤ。
????
一瞬訳がわからず絶句するライアだったが、要するに・・・。
「ハァ!!!?本物の唐変木かい!?あんたはぁ!!!
そりゃ、単に熱狂的なラクス様ファンであるあんたがダフ屋から10倍近い高額支払ってとったコンサート会場で、ラクス様がノリでザフト兵全員に言ったってだけだろうがっ!!
つーか、28にもなって最前列キープしてんじゃねーよッ!!
ラクス様の仰る通り、あんたの脳ミソに『もうちょっと頑張って』って言いたいよっ!!あたしゃ!!!
つーか、全然今回の任務内容の『に』の字も出てきていないじゃないか!?今ここでカプセルごと永久に沈ませてやろうかぁぁぁ!?」
ライアの激怒ぶりは最高潮に達しようとしていた。
部下達も、その様子にオロオロし始める。
「冗談はさておき、ライアよ。
『東アジア共和国がザフト侵攻のためによからぬ事を企てており、新型のMSを完成させた』。
この情報は確かだ。
このオレの・・・ここん所よく聞け、高雄基地に潜入しているこのオレの部下が引き出した情報なのだからな!」
「部下、だぁ?」
「まあ、正確に言うと前大戦時の部下、だな。戦争終結後、軍を辞めて地球に降りたとは聞いていたが・・・。
従って、極秘任務とかで潜入させていたとかって話じゃあない。
なんで”あいつ”が地球に行き、高雄に今いるのかはオレも知らないが、まあ、何用かあったんだろう。
だが!!信用出来ないようなヤツじゃあないぜッ。
そう、これは正にオレと”あいつ”の熱い友情が掴んだ奇跡の情報だ!!
それにな・・・」
ゼーヤはライア達にテキスト通信で事前に得た情報を転送する。
それを見たライアは、打って変わって血相を変えて神妙な面持ちとなった。
「!!・・・こりゃ・・・マジなのかい、ゼーヤ!!これがもし本当なら・・・」
「そうだ。なんとしても成功させねばなるまい?
とりあえず当面の我々の目標はその”オレの元部下”と合流し、新型機の奪取、若しくは破壊。そして、連合軍が持っているあらゆるデータの奪取。まぁ、これは”あいつ”の方でなんとかしてくれるだろう。
そして、肝になるのは・・・マスドライバーの破壊だ。
いいか!この戦い、絶対に負けるわけには行かないぜ、みんな!!」
「・・・ちっ。ガセかもしれないが、マジなら確かにしくれないな。しょうがない。今回はあんたの部下とやらを信じてやるとするよ。」
ライアと部下達は漸く任務の重要性を認識したようだ。
ゼーヤは満足げにうんうんと頷いたかと思うと、急に顔をしかめて辛そうな表情になる。
「どうした?どっか調子でも悪いのかい?ゼーヤ」
「いや・・ライア。体調の方は絶好調なのだが・・・
今夜の作戦のために・・・今晩放送のTV番組、『ライブアンコール!ラクスさまコンサート(総集編)』をリアルタイムで見る事ができないという非常事態となってしまってな・・・。
録画予約してきたとは言え、今正にラクス様の可憐なる御姿が全国に放映されているかと思うと・・・くぅ・・・断腸の思いだぜッ!」
「あたしゃ、よりによってあんたが隊長である事に、常々断腸の思いだよっ!!
・・・まぁ、いい。これがマジ情報で尚且つ任務成功したとしたら、あたしら英雄だ。
あわよくば、あたしもフェイスになれるかもしれない。そしたら、こんな唐変木の隊なんか辞めて、エリシュ隊がつくれるってもんさ。
お前達!そういう事だそうだから、気合入れなよ!!あたしはあんた等のお守りまでするつもりはないからね。」
「「はい、姉御!!」」
「バ、バッキャロー!そんな掛け声で気持ちが引き締まるものか!!このオレが・・・ここん所よく聞け、ラクス様から「期待しておりますわ」という御声を頂戴した(コンサート会場でファン全員が頂戴したのだが)このオレが、今から、
『L!O!V!E!』
と掛け声をかけるから、お前達は『ラークスッッ!!!!』と・・・」
アッシュの群れは、ゼーヤのカプセルをその場に残して目的の場所へとその漆黒の海中を加速していった。
「お、おーい?ちょ・・・置いていくなんて、酷いじゃあないか?!オレ達、熱き血潮の仲間だろう?・・・ラ、ライアさーん!!!」
慟哭の闇をもたらす戦慄の夜が、今始まろうとしていた。
***
実体なき、赤い魔物達が激しく踊り狂う。
そのダンスパートナーの一つは、僕の家だった。
燃えて逝く。
長年住んで来た沢山の思い出が詰まった僕の部屋も、父さんと母さんの思い出が唯一残っていたあの部屋も、”大切なもの”が・・・全て燃えて逝く。
”まばゆい大きな光”が、見えた。
そう思ったら、全ての景色が変わってた。
悪夢のようなその光景を呆然と見つめていた僕を見つけた姉さんが、泣きながら僕の手を引っ張って走りだす。
僕も走った。
走って、走って、走り続けた。
燃え上がる業火と熱風吹きすさぶ僕の故郷の見慣れた道を、ただひたすらに・・・。
何がなんだかわからず、ただただ涙で視界が滲む。
どうしてこんな酷い事が出来るのだろう?
僕達が一体、何をしたっていうんだ。
その時、僕と姉さんの行く道に崩れた建物の瓦礫が降り注ぎ、行く手も帰る方向もふさがれてしまったんだ。
四面楚歌、いや、四面業火だ。
僕達はもうダメだって思った・・・。
その時、僕達の目の前に現れたのは・・・。
***
「ティエン!ティエン!!」
「うわぁっ!!!!!!」
ティエンは、コクピットのシートを蹴る様にして飛び起きた。
どうやらアウローラのOS調整に夢中になっている最中に、眠ってしまったようだ。
背中はぐっしょりと濡れ、額からも大粒の汗が零れ落ちる。
ふと気が付くと、目の前には銀髪の少年が心配そうな顔でこちらを覗き込んでいた。
「ア・・・アロイス・・・。」
「いや、起こしてすまない。用があってMSドックに寄ったんだけど・・・そうしたら、君のうめき声が聞こえたものでね。大分うなされていた様だよ。大丈夫かい?」
そう言うと、アロイスは肩で息をするティエンにタオルを差し出し、口元を少しだけ緩めて心配そうに微笑した。
「ありがとう」とティエンはその震える手でタオルを鷲掴みにし、汗をおもむろに拭い始める。
体が・・・吐き気がするほどに気持ち悪い。
漸く息をつき時計に眼をやると、既に夜中の1:00を回った所だった。
「・・・寝ちゃったんだね。しかも、2年前のあの夢を見るなんて・・・。最近はめっきり見なくなっていたのに。」
「2年前・・・の?」
アロイスは聞いてはいけない事なのかも知れないと思いながらも、ふと質問するかのように反芻した。
ティエンは少し悲しそうな笑みを浮かべながらゆっくりと頷き、アロイスに告白し始めた。
あのザフトによる高雄マスドライバー襲撃事件で、故郷の町を焼かれてしまった事を。
高雄基地に程なく近いという事もあり、そして、運も悪かった。
ほぼ無血的状況で制圧された当時のその事件において、ティエンの暮すその街は偶然そこに飛来したザフトMSと連合の戦車部隊が鉢合わせとなり、未曾有の大打撃を被ってしまっていたのだ。
多くの思い出が灰となり、多くの友人、知人、そして大切な人をティエンは失ってしまった。
両親を幼い頃に亡くしていたティエンにとって、歳の離れた最愛の姉と一緒に生き残れた事だけが唯一の救いであった。
「・・・このままじゃ、いけないと思ったんだ。無力なままじゃ、目の前で壊れてゆく現実をただただ見ていることしか出来ない。そんな事は、もうごめんだった。
だから、僕は軍に入る事を決意したんだ。
・・・最も、姉さんには大反対されてたから、士官学校に入る事をなんとか無理矢理許してもらったのは、前大戦が終わってからなんだけどね・・・。」
「そうか・・・それで軍に・・・。」
アロイスの言葉にティエンは恥ずかしそうに頷く。
それを見たアロイスは、少し伏せ眼がちになりながら言葉を続ける。
「なら、ザフトを・・・君の街を焼いたあのザフト軍を・・・恨んでいるだろうね・・・。」
唐突なその質問に、ティエンは一瞬キョトンとする。
そして、暫く「う〜ん」と考え込んでから、はっきりとこう答えた。
「確かに、簡単に割り切れる話じゃないよ。僕にとっては・・・大きな、そう、大きなトラウマだしね。
僕は、あの高雄襲撃の時に戦争の本当の恐さを知った。・・・大切な人が・・・たくさん死んだよ。
でも、許せるとか許せないとか、恨むとか恨まないとかって言う感情は、少なくとも今は持っていないんだ。」
「何故・・・どうしてだい?」
アロイスの真剣な表情に少しだけ気おされながら、ティエンは鼻の頭をポリポリとかいて困ったような顔をして見せた。
しかし、隠し事の苦手なティエンは、意を決したかのようにその真意を口にする。
「僕と姉さんが燃え盛る街を必死で逃げていた時、辺りを炎に囲まれてしまって・・・。建物が急に倒れてきたんだよ。もうダメだって・・・そう思ったんだけど。
その時、助けてくれたんだ。ザフトのMSが。・・・炎に照らし出されたあの”ガンダム”が、倒壊する建物から僕達の事を救ってくれた・・・。」
「え・・・・。」
「やっぱり、アロイスも信じられないと思うかい?
攻撃してきた張本人達が、打って変わって人命救助だなんて。僕も最初は信じられずにその場で呆然としていたんだけど・・・。
四方を瓦礫の山と炎に囲まれていた僕達に道を作ってくれたんだ。
『早くここから逃げろ』
・・・って、声がしてね。
その声は、とても、とても悲痛な感じに聞こえる声だった・・・。まるで、『ごめんな』って言っているみたいに・・・。」
どことなく懐かしそうに、それでいて悲しそうに語るティエンの顔を、アロイスはじっと見つめていた。
ティエンは恥ずかしそうに眼をそらしながら話を続ける。
「お蔭で僕と姉さんは助かった。そして、その時初めて知ったんだ。
ザフトだって、同じ人間なんだって事を。
だから、僕はザフトを憎まない。コーディネイターを恨まない。
もし、憎むとするならば、戦争を憎む。
だからこそ、戦争の手からこの国を、故郷を、姉さんを守るための力が欲しいと思ったんだ。
あの日、僕達を助けてくれたザフト兵のように”戦争”からみんなを守りたい・・・。いや、僕が守らなきゃいけないんだって、そう思ってさ。」
「ティ・・・ティエン。君は・・・。」
アロイスの酷く驚いたような表情に気付いたティエンは、自分の言っていた事の重大さに気付く。
「あっ、連合軍の兵士がこんな事公言しちゃ、マズかったかな!?だ、だよねぇ・・・。アハハ・・・ご、ごめん。不愉快だった?」
打って変わって焦りの色を見せてオロオロと狼狽するティエンに、アロイスは優しく微笑みながら首を小さく横に振る。
「いいや。そんな事はないさ。
僕も、本当は常々思っていた。戦争をなくして・・・ナチュラルもコーディネイターも・・・全ての人たちが平等に、安らかに暮らせる世界になったら、どんなに素晴らしいだろうって。
だから、ティエン。君のその気持ちが・・・・・・嬉しくて、感動していたんだ。」
予想もしていなかったアロイスからの言葉に、ティエンは何故だか妙に恥ずかしくなって赤面しながら鼻の頭をポリポリと掻いた。
アロイスもなんだか気恥ずかしくなったのか、唐突に思いついた冗談でその場の話を切り替える。
「だから、ティエン。僕にはその気はないって言っているじゃあないか。もしかして、本当にそっちの人なのかい?君は。」
「ちょ・・・、ヒドイよアロイス!人が折角感動してたのにさ〜。そういえば、初対面の時もそんな事言ってたじゃないか〜!」
同時に噴出すように笑い出す2人。
何故だろう。不思議なんだよ、姉さん。
戦争をこの世界から完全に失くす事。
そんな事はできっこない事なのかも知れないけど、アロイスと一緒なら何故だかなんとかなってしまいそうな気がするんだ。
僕って、やっぱりおかしいかな?
笑いながらティエンは心からそう思った。
そして、それはアロイスも・・・。
***
用事を済ませたアロイスと共に、ティエンは自室へと戻る廊下を並んで歩いていた。
ふとした弾みだったのだろう、アロイスの懐から小箱のようなものがポロリと落ちる。
おもむろにティエンが拾おうとするとそのフタがパカリと開き、中には”銀色のネックレスらしきもの”の姿があるのが眼に入った。
慌ててそれを拾い上げたアロイスは急いでそのフタを閉め、再び軍服の懐の中に戻す。
アロイスが安堵の息をついて、ふとティエンの顔に目をやると、ティエンのブラウン色の瞳は好奇の輝きに満ち満ちていた。
「今のは何かね?アロイス曹長?・・・一体、誰にあげるの?・・・誰?恋人??ねぇ、誰さ?教えてくれてもいいじゃん、アロイス!」
ティエンのそんな”はしゃぎ”っぷりを目の当たりにしたアロイスは目をいぶかしめて嫌味を言う。
「ティエンってそう言う所、本当に子供っぽいよね。」
「えっ、そ、そんな事ないでしょ?あれ?僕、やっぱり子供っぽいのかな・・・。」
普通に少しだけ落ち込むティエンに、アロイスは「冗談だよ」と苦笑する。
「冗談って、ひどいなぁ。・・・もういいよ。どうせ、僕の知らない人にあげるんだろう?僕とアロイスの共通の知り合いで女の人なんて・・・あーーーー!!!いたじゃん。
も、も、も、もしかして、アムルさん?」
「ち!違うよ!アムルさんじゃあないよ。別の人さ・・・・あっ!」
ティエンの冗談半分の尋問に焦ったのか、つい口を滑らせてしまったアロイスは、顔を真っ赤に染めながらそっぽを向いてごまかそうとする。
しかし、そんな事でごまかされるティエンではなかった。
「へぇ・・・!恋人かい?」
観念したかのようにアロイスは渋々話し始めた。
「いいや、違うよ。知り合いの人にあげようと思っていたんだけど・・・。もう、いいんだ。」
「?どういう事さ?」
アロイスは苦笑いしながら少し辛そうに答えた。
「・・・すれ違い、みたいな感じかな。もう、・・・会えないんだ。彼女には・・・。」
「そっ・・・そうなんだ・・・。ご、ごめん。」
「い、いや・・・別に・・・。」
微妙に気まずい空気がその場を流れ始める。
すると、アロイスが思い出したかのように唐突にティエンに疑問を投げかけた。
「・・・そう言えば、何でティエンはアウローラの事を最初から”ガンダム”と呼んでいたんだい?」
「ん?ああ、その事か。”ガンダム”ってのは実は姉さんが最初に言ってた名前なんだよ。」
「君の・・・お姉さんがかい?」
ティエンの姉が”ガンダム”と呼んだ?
一体どういう事か皆目検討も付かないアロイス。
ティエンは頷き、説明し始める。
「実は僕の姉さん、元々機械工学を学んでいてね。
ほら、この国って技術大国って言われるほどに工業が盛んだろう?
僕達の故郷では特にそうでさ。大抵の人が男女問わず技術職に付いている事が多いんだ。
姉さん、高雄で助けてくれたMSを見て以来、あのMSの事をとても気にするようになってしまって・・・。興味本位で調べてみたらしいんだ。
・・・結局アレがなんだったのか今でも分からないらしいんだけど、連合軍がヘリオポリスで開発していたっていう”G”って機体とちょっと似ててさ。
姉さんが後でさらに詳しく調べたら、その”G”シリーズって共通のOSが使われているって言うだろ?」
「ああ、聞いた事がある。確か・・・データにあったぞ・・・。」
そう言うと、アロイスは手もちの量子コンピュータで手早く検索をかける。
「 G eneral
U nilateral
N euro - link
D ispersive
A utonomic
M aneuver Synthesis System
”単方向分散型神経接続による汎用自動演習合成システム”ってOSだね。
!・・・あ、なるほど。もしかして、そのOSの頭文字をつなげて・・・GUNDAM?」
アロイスの瞬時にはじき出された推理にティエンは酷く仰天する。
この銀髪の少年の分析能力にはいつも驚かされることなのだが・・・。
「へっ!?よくわかったね。流石、アロイス。そうなんだよ。
それで、姉さんが”ガンダム”って言い出したんだよね。『”G”よりも、こっちの方がカッコイイでしょう?』ってさ。勝手にね。
それが霧消に耳に残っちゃってて。ほら、アウローラも顔が似ているでしょ?”G”にさ。
だから、見たときは僕も吃驚したよ。『ガンダムだっ!』ってさ。」
ティエン達にとっては窮地を救ってくれた守護神の名前・・・それが”ガンダム”と言ったところであったのだろうか。
なるほどね、とアロイスは微笑む。そして一人ポンと手を叩いた。
そうか。老師や・・・”シンシアさん”がアウローラの事を”東アジアガンダム”って呼ぶのも、もしかしたらそういう事か。気付けば誰でも思いつきそうな愛称だものな・・・。
「どうしたの?」と尋ねるティエンに「なんでもないよ」と答えたアロイスは、懐の膨らみにそっと手を当て、その些細な謎が解けた事に一人感慨にふけった。
そんな折、廊下の突き当たりからこちらに歩いてくる2つの人陰が視界に入る。
こんな遅くに一体誰だろう?と眼を凝らすと、それはアムルとブルースの2人であった。
「アムルさん、ブルースさん。どうしたんですか?こんな夜中に。もしかして、秘密デート?」
先ほどのノリで言ってしまったティエンのジョークを聞いて、アムルはケタケタと笑い出し、ブルースはポっと頬を赤く染める。
「ちっがうよぉ〜。ブルース君とはさっきそこで会っただけ。私はMSドックに用があるの。えと・・・ちょ、ちょっとドグーのコクピットに忘れ物しちゃってさ。アハハ・・・」
「ゴ、ゴホン・・・我は外出なり。詮索無用。」
そう言うと2人はそれぞれの方向に向かって去って行った。
「そういえば、ブルースさんは”この時間になると毎日”外に行っているみたいだね・・・。一応外出許可セキュリティーのチェックデータもこの中に入ってるから・・・。」
アロイスは量子コンピュータを指差してティエンに説明しながらいぶかしむ。
すると、ティエンは自らのまん丸なその目を指で吊り上げるようにして細めながら、ブルースの声真似をし始める。
「『闇夜で視覚を絶ち、感覚を研ぎ澄ます夜間修行也』
・・・とかなんとかって感じじゃない?
『常に様々なケースを想定した修行を積むのが獣拳の極意と知るが良い』
・・・って言ってたからねぇ。ありえそうでしょ?」
「案外そうだったりするかもしれないね。でも、フフフ・・・似てるなぁ、ティエン。」
2人はそんな冗談を言いながら、それぞれの自室へと戻っていった。
***
草木も眠る丑三つ時。
深夜のMSドックの中で、一人前々からの計画を実行せんと潜んでいた男がいた。
髷を結わった黒髪がその漆黒の闇間に溶け込んでいる。
「私は認めないぞ・・・。あんなまぐれで、アイツが・・・新入りであるティエンが、あのアウローラのパイロット等と!あのような俗物にアウローラを任せられるものかッ!!」
先のアウローラ適性試験にて醜態を晒し、パイロット資格をティエンにゆずらざるを得なくなっていたシャライ・ミカナギである。
プライドが高く、そしてあのアウローラのパイロットになる事に異常な執念を燃やしていたシャライは、ティエンが正式なパイロットに任命される前になんとしてでもこのアウローラを自分のものに出来ないか、一人静かに必死に策を練っていたのだ。
それこそ、いつもの如くアムルにちょっかいも出さず、ティエンを罵る事もせず、一人淡々と。
「そう、あの機体は・・・アウローラは”私にはどうしても必要なもの”。
2年間待ったのだ・・・!もう、今日しかない。アウローラは・・・この私、シャライ・ミカナギが必ず頂く!!」
シャライのその姿は、黒く歪んだ闇に染まっていた。
≪PHASE-04へ続く≫
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