PHASE-02 −ACCOMMODATOR− 適応者/調停者

「ぃやぁぁぁぁ!!!!」

大地に轟く悲鳴の如きその一声は、決死の咆哮であった。
ライ・ティエンは自らのダガーLの持つビームサーベルを振り上げ、相対する紫色のランチャーウィンダムに対して特攻をかける。
しかし、その斬撃は空しく虚空を切り裂く事となる。

肩透かしを食らってつんのめるダガーL。
その動きの一挙手一投足を読みきって後方へ大きく間合いを取っていたランチャーウィンダムから、ティエンのいるコクピットに向けて”必殺の火線”が放たれた。

いや、正確には実戦だったとしたならば”必殺であったであろう火線”が、である。

それは、攻性のないビームライトであった。
被弾すると機体がそれを察知し、その部分の駆動が停止するという特別な演習用OSをMSに組み込ませて使用しており、今、ティエンのダガーLの機能が完全にダウンする。

『そこまで〜!あーあ、これでシャライくんとの模擬戦績、49戦18勝31敗ね、ティエンくん。』

ティエンが”魁龍クワイロン”に配属されてから、既に数週間が過ぎていた。
部隊にも慣れ、基地内にあるダガーLやストライクダガーの出力調整試験、動作試験、性能解析、その他諸々・・・・。
配属から短期間ではあったが、既に多くの任務を仲間たちと共に順調にこなしていた。

あの極小のMS”東アジアガンダム”と巨大な”酒樽”こと、ドグーの本格的運用試験も既に秒読み段階に入り、近日中にもフジヤマ社の方から開発に携わった研究員が派遣されてくる事となっていた。

正に、休む暇もない。
新配属とは言えティエンも補充要員。猫の手の如く駆り立てられているのだ。
そんな合間を縫っての実戦演習である。

「ふぅ〜〜〜。負けちゃったよ、姉さん。あ〜あ。・・・今日もまた、お天道てんとさんに笑われちゃうや。」

ダガーから降りたティエンはパイロットスーツのヘルメットを取り、その艶がかった黒髪を左右に振って心身共に火照った頭を冷やす。
ふてくされるかのように基地内のアスファルトの上にストンと座り込むティエンの体を、燦々たる太陽の光が照らし、黄砂の混じった涼風が駆け抜けてゆく

慣れ親しんだその高雄カオシュンの空気が、疲れた体には実に心地いい。

「惜しかったね、ティエン。」

声の方に顔を向けると、柔和な笑みを浮かべた少年が銀色の長髪を美しく風にたなびかせながらこちらにゆっくりと歩いてくるのが目に入った。
アムルと共に模擬戦のデータを記録していたオペレーターのアロイス・ローゼンだ。

まるで、どこかの新鋭女優が演じる映画のワンシーンみたいだよ、姉さん。

等と、ティエンは下らない妄想を思い描いて一人苦笑する。

アロイスがすっと差し出した手をとったティエンは、頬を膨らませたままに立ち上がる。

「あ〜、でも流石はシャライさん。最初は全然歯が立たなかったけど、最近はボチボチ勝てるようになってきてんだけどな〜。ここぞと言うところではやっぱりうまいや。」

「フフフ、君の場合、高確率で数回に一回、MSの動作が大振りになるんだよ。そこは狙い目だから気を付けた方がいいかもしれないね。それと、もっと前に踏み込まなきゃ。
格上の相手をその勢いに巻き込んでしまうくらいにね。
でも、ティエンだってここ数週間で見違えるくらい動きがよくなったじゃないか。老師も目を見張っておられたよ。『癖もないし、いい素質を持っとる』ってね。」

・・・癖のないって、「要するにペーペーのド新人って事じゃないか」とティエンは苦笑いで返す。
「そうとも言うかもね」と、アロイスは意地悪な含みを持って微笑した。

この数週間の共同テスト任務で、ティエンとアロイスはすっかり仲の良い友人同士になっていた。
まるで、旧来からの親友か幼馴染であるかのように。

優雅にも見えるほどの余裕を持って他人を気遣う冷静なアロイスと、素直で人懐っこく一途な心をもった明け透けで純粋なティエンは、お互いに何か惹かれるものがあったのかも知れない。

「ちぇっ。次は絶〜〜〜〜対に負けないぞ!」
「ほう・・・私に喧嘩を売っているという事かな、貴様。」

決意を胸に拳を突き上げたままティエンが恐る恐る振り返ると、あの紫色のランチャーウィンダムのパイロット、シャライ・ミカナギがこめかみをヒクヒクと痙攣させながら腕組みをしている。
ティエンは「まずい!」と思ったが、既に後の祭りだ。

「貴様、最近ちょっと腕を上げたからといって調子に載り過ぎだ、この無礼者!大体、貴様のような下賤の者が私のような高貴な人間と手合わせできるという事だけでもありがたいと思え!この俗物が!!」

また始まった。とティエンは作り笑いでその場をやり過ごそうと決心する。

アロイスの話だと、シャライは東アジア共和国でも名の知れていた名家の出なのだそうだ。
最も、名が知れていたのは遥か昔の事であり、今ではその名に公的な意味はさしてないようなのだが、代々ミカナギ家の血を引く者はそのかつての栄誉を誇りとしている。

オーブあたりの出身なのだと思っていたティエンは、その話を聞いても俄かには信じられなかった。

・・・アロイスが貴族ですっていうなら、証拠がなくても信じてしまいそうなものだけど、あのシャライさんが、ねぇ。世の中は広いよね、姉さん。

ガミガミと一方的な見解の雷を落すシャライに、アロイスが見かねて口を挟んだ。

「そういえば、シャライさん。最近後方に下がり気味ですよ。
というか、頻繁に下がりすぎです。アレでは、もう少しティエンの踏み込みが早かったら、下がった瞬間を狙って逆に追撃を受けてしまいますよ?
その証拠に、ブルースさんとの戦闘では最近必ずそこを付かれていますよね。」

「う、五月蝿い!私は華麗なる後方支援が専門なのだ!下がって何が悪い!!」

「下がるな、とは言っていません。でも、臨機応変に前に出る事もしなければ、単純なパターンはいつか読まれてしまいますよ?・・・そうなったら、テストパイロットの存続は・・・。
・・・また新規募集をかけて優秀な人材を捜し当てるのは、実は結構酷なんですよね・・・。」

アロイスの放った最後の言葉にゴクリと唾を飲むシャライ。

そうなのだ。

この”魁龍クワイロン”の中では、そのMS運用試験チームという性質上、MSパイロットよりもその試験結果などを分析し、纏め上げるオペレーターのアロイスの方が実質立場が重い。

少なくとも与えられた結果だけは出さなければ隊の存続事態が危うい事になるためだ。
そのため、使いにくいパイロットは・・・止む無し、という暗黙の掟がこの部隊にはあった。
最も、アロイスもそんなに鬼のような切り捨て方はした事がないし、単なる脅しとしてこのように度々仄めかしているだけではあるが・・・。

「フ、フン!お前に言われなくてもわかっている!!余計な事をいうな、この俗物ッ!」

という捨て台詞を残し、シャライはそそくさとシャワールームへ向かって行った。

「た、助かったよ。アロイス。」
「フフ。でも、気にしないでね。ティエン。あの人、君に恨みがあるとかっていうわけじゃあないんだ。元々ああいう性格なのと・・・多分、”アレ”を気にしてるんだろう。」
「?・・・”アレ”って?」

そんな折、ティエンとアロイスの間に一人の少女が割って入ってきた。
いつもの満面の笑顔で2人の前に現れたのは、”魁龍クワイロン”の紅一点、アムル・シュプリーだ。
両手にはなにやらドリンクケースとタオルを2つずつ持っている。

「2人とも、お疲れ様。はいっ、ドリンクとタオル持って来たげたよ!」
「うわぁっ、汗だくだし、咽喉カラカラだったんですよ。ありがとうございます!!」

ティエンは嬉しそうに一礼して汗をタオルで拭いながら、もらったドリンクを頬張る。
アムルとアロイスはそんなティエンの童顔を見つめながら、『こうして見ると、歳以上に幼く見えるな』とつくづく思わされる。

アロイスにもドリンクとタオルを薦めるアムルだったが、「僕は動いてませんしね」とアロイスは笑顔で丁重に断った。

「本当においしい!このドリンクって、もしかしてアムルさんが作ってくれたものなんですか?」

ティエンのその言葉を待ってましたとばかりに、アムルがニヤリと微笑む。

「そ〜よぉ。アムル特製スポーツドリンク、その名も”アムル吟醸ぎんじょう”!
”おいしかった”でしょ?後でお代をいただきま〜す。あ、そうそう。そのタオル代も合わせて置くからね。
あ、いいのいいの!こっちでちゃーんとまとめて請求書書くから。税込みで。任しといてっ。」

ポケットから取り出した電卓を手に目を輝かせるアムル。

は・・・図られた。

もう何度目になるだろう。
アムルのくれた物にうかつに手を出してはいけないという事を知りつつも、あの愛らしい笑顔に人のいいティエンはコロッと騙されてしまう。
しかも、虚を突く話の進め方が巧みなのだ。

「アロイスくん、やっぱり君も飲みなよ〜。おいし〜よ?(推定)」
「い、いえ・・・そ、そうだ!シャライさんに差し上げたら、喜ぶんじゃないかな〜。」
「ん、ダイジョブ。もうあげたもの。・・・・・・倍の値段でね。」

アムルが最後にぼそりとつぶやいたその一言を聞いて、アロイスは心底恐ろしく思った。
ヤバイ。このままだと逃げ場がない、と。

シャライと言う名を聞いて、ティエンもハッとなる。

・・・ああ、そうだよ。という事は、やっぱりあの人が・・・シャライさんが「無礼者!またアムルの・・・」って来るパターンだよね、姉さん。

「いいや、彼奴なら来ぬぞ。既に”先に行っておる”也。」

ティエンは自分の心の中で思っていた事に見事に突っ込みを入れられて酷く驚く。
ふと隣を見ると、辮髪の男がまたもや奇妙なポーズをとって立っていた。
その男とは勿論、自称”祖国四千年の拳士”、ブルース・ネルフだ。

えっ、いつからここに!?
突然の事に驚いたのは、ティエンだけではなくアロイスとアムルも同様だった。

「ブ、ブルースさん!!?いつからそこにいたんですかっ!?」
「ティエン、御主が其処に座り込んだ時からその辺におった。”獣拳じゅうけん七節之構ななふしのかまえ”也。」
「ななふし??なぁに、ソレ?今度はなんの面白動物??」

アムルさん・・・ブルースさんの”獣拳”を、面白動物て・・・
いや、確かに面白いけど・・・。

「ナナフシ・・・草食性の昆虫で、木の枝に擬態した姿が特徴的・・・か」

アロイスが、手に持ったハンディ量子コンピュータで素早く検索して説明を加える。

「如何にも。その様、お主らを森の中の木々に例えるならば、我も枝の一つと成りて音無く我無く形無く・・・其処に潜むもの也。」

再びポーズを決め、得意げにチラリとアムルに視線を向けるブルースだったが・・・

「うぇぇ、虫、嫌い・・・。」
「・・・!!・・・」

アムルの予想外のリアクション― ティエンとアロイスはなんとなく予想していたが ―に、ガックリと肩をうなだれるブルース。

妙な事になってきたその空気を変えようと、アロイスが話を切り替えた。

「あの、ブルースさん。何か僕等に御用でしたか?確か、隊務スケジュールによると、この時間ブルースさんは老師と共に”ワイルドダガー”の運動性能試験を行っていらっしゃるはずですよね?」

アロイスの問いかけに我を取り戻し、再びいつもの合掌の構をピシっと決めるブルース。
・・・どうやら、気持ちの切り替えが早い人らしい。

「老師より伝令也。これより重大な発表を執り行う故、全隊員は”アウローラ”の元へ。」
「アウ・・・ローラ?」

ティエンのつぶやきを既に先読みしていたのだろう、アロイスがハンディ量子コンピュータのディスプレイをティエンの目の前にスっと提示する。そこには、あの”東アジアガンダム”の図面らしきものが表示されていた。
そして、それに補足するかようにアロイスは言葉をつなげる。

「通称”東アジアガンダム”。その正式名称がアウローラなのさ。知らなかったのかい?」
「へぇ・・・。あの”ガンダム”、アウローラって言うのか。知らなかったよ、アロイス。」
「左様。ともあれ、あの機体の元に行かれたし。」

そう言うと、ブルースは軽い身のこなしで風の如く去って行った。
「一緒に行けばいいのに〜」とアムルはごちったが、恐らく移動までもが彼にとっては修行の一環なのだろう。

ティエン達も急ぎ、指定された場所に向かって歩き出した。


***


「遅いぞ、貴様ら!老師をお待たせして、何をしている!!」

逸早く集合していたシャライの声に急かされる様にして、ティエン達3人は駆け足で既に到着していたブルースの横に整列する。

「フム。そろったようじゃの。」

リゥ・ロンファン老師は老木を削ってつくった愛用の杖をコツコツと突きながら、整列する隊員の前をゆっくりと回り始める。
勿論、落ち着きが無く歩き回っているというわけでは無い。
そうやって人の仕草やその時における感情・状態を洞察するのが癖のようになっているらしい。

この時が隊員達にとって一番緊張する瞬間だ。
この前など、MS演習終了後の集合時に、アムルの指先に付いていた”気付かない程微量の白い粉”に目を落とし、演習中にアムルが大好物のシュガードーナッツをつまんでいた事を瞬時に見破った程、些細な事でも見逃さない目を持っている。

一通り見回し、「さて」とロンファンは改めて本題を切り出し始めた。
一同は少しだけほっとする。

「お前さん達を集めたのは他でもない。そろそろ”こいつら”の本格的な運用を開始する事になっとるんじゃ。基本データは大体取り終えとるからの。

こいつらと言うのは、勿論、”酒樽”と”東アジアガンダム”の事じゃ。

・・・察した者もおるかもしれんが、
今日は”こいつら”の正式なテストパイロットを発表しようと思っとる。」


余談ではあるが、ロンファンは何故だかMSの事を自分のつけた愛称でしか呼ばない。
しかも、その愛称は思いつきで適当に付けられているものが多いためか、なんとも格好の悪い響きの物ばかりであった。
真剣な話をしている時でも、とにかく力が抜けるのだ。

・・・もしかしたら、それも老師の狙いなのかもしれないけれど・・・。


ティエンを初めとして、隊員たちは「ついに来た」と息を呑む。

それはそうだろう。
自国である東アジア共和国が誇るフジヤマ社が開発に成功した唯一無二の新型機2機のテストパイロットである。
それに選ばれる事は非常に名誉ある事であると同時に、最新技術の結晶を受領する事となるのだ。
東アジアのテストパイロットにとって、これほどの夢のような機体は存在しないといえるかもしれない。

「老師!誰があのアウローラに乗る事が出来るのか、私も随分と気になっておりました!!是非、お聞かせいただきたいっ!!」

特にシャライの眼の輝き様は、他の隊員のそれを遥かに抜きん出ていた。

・・・ああ。もしかすると、アロイスが言っていた「アレを気にしてるんだろう」というのは、この事か。

ティエンはそう察した。

ロンファンは緊張する4人の部下達を順々に見つめながら、ゆっくりとその決定を告げ始める。正に、緊張の一瞬だ。

「では、発表する。まず、”酒樽”はアムル。お前さんに任せる。
そして、”東アジアガンダム”は・・・

ティエン。

お前さんじゃ。」

「「「「えっ!!!!?」」」」

異種同音の声が共鳴を起こすかの様に一斉にドック内にこだまする。
突然発せられたその声量に耳をふさぎながら、ロンファンはいぶかしげにティエンとアムルに問いかけた。

「なんじゃ、嫌じゃったか?アムル、ティエン。」
「わぁーい、モチロン嬉しいですよぉ!! 私、貰えるものは拒まない主義だし。」
「え、い・・・いえ!!!でも、驚いちゃって。だって、一番下っ端の僕なんかが選ばれるなんて・・・」

キャピキャピと喜ぶアムルをよそに、ティエンは口をポカンと開けたままにロンファンの顔を惚けたように見つめていた。

・・・隊員の追加募集をした時点で多少は予想していたとは言え、まさか、ティエンが選ばれるとは・・・。老師も大胆な事をされるものだな。

そんな事を思うアロイスの横から、顔を真っ赤に紅潮させたシャライがロンファンの前に歩み寄る。

「な、な、納得がいきませんっ、老師!!ブルースやアムルならば、私も・・・多少は認めざるをえない所ではありますが、よりにもよってあの最低最弱のティエンにアウローラを任せるなどっ!!愚考の極みとしか思えないっ!!」
「口を慎め、シャライ。お主、大恩ある老師に向かってなんと言う暴言か。」

ブルースに制止されて漸く冷静さを取り戻したシャライは、老師に頭を下げつつも今回の人選に関して断固として食い下がるつもりはないようだった。
それほどまでに、シャライはあの新型機のパイロットになる事を望んでいたのだ。
そう、あの力が”どうしてもシャライには必要”なのであった。

やれやれ、とロンファンはいつものように自分の顎ひげを2、3度撫で、選考の理由についておもむろに語り始める。

「よいか、シャライ。そして皆の者もよく聞け。

”酒樽”と”東アジアガンダム”は、大きな汎用性と可能性はあれども、どちらかと言うたら”陸戦型中近距離戦闘タイプ”のMSという分類になる。

”酒樽”は陸戦を主としながらも、実は海戦にも対応できるような設計になっとる様での。とは言え、対応できるかどうかテストして欲しいとの事なのじゃ。
となれば、アムル。”海中戦のスペシャリスト”であるお前さんを置いて他にはおるまいよ。

アウローラに関して言うならば、パイロットの実力のみで言うたら、ブルース、シャライ。お前さん達の順じゃろうの。
じゃが、ブルースは先日配備された”猫人間”(ワイルドダガーの事)の方が、獣拳法を生かして様々な可能性を引き出す事が出来ると判断した。

そして、シャライ。お前さんは、狙撃や銃撃等の後方援護を得意としとる。”この2機では”その能力を十二分に出す事はできんじゃろう。」

ロンファンは、ふぅ、と一息入れて本題のティエンの選出について語り始める。

「その点、ティエンはまだまだ荒削りな部分は多いが、前に前に出る泥臭い戦い方の方が性にあっとるようじゃ。
アロイスに見せてもらっとる戦闘データを見ても、模擬戦での勝率の8割近くが至近距離での格闘乱戦のようじゃからの。
まぁ、それ故に得意レンジの被っとるブルースには一度も勝てておらんようじゃがの。

まぁ多少技量に問題はあるかもしれんが、アウローラには今のところは適任じゃ。
元々資質のある者のみ集めたのがわしの部隊”魁龍クワイロン”じゃしの。
腕など、これから精進すれば何も問題はない。違うかの?シャライ。」

「し、し、しかし!!」

シャライはそれでも一向に納得できないようだった。適任と言わしめるのが新入りのティエンである事が、それほどまでに気に入らないのであろうか。
その時、ブルースがこの男にしては珍しく自分からロンファンに対して一つの進言をした。

「老師よ。先見在る老師の”機人”たるその御眼。
それがアウローラのパイロットとして選びし者がかのティエンなれば、それは間違う事なき人選と理解致します。
また、我は老師の仰る通り、”白虎”(ワイルドダガーの事。ブルースはこう呼ぶ)を痛く気に入っておる故、新型にさほどの興味も抱きませぬ。

しかし、失礼ながら我も現段階では今回の人選の全てに納得がいった訳では在りませぬ。
恐らく、シャライも同意。なれば、結論は一つ。

ティエンとシャライ。どちらがアウローラにより相応しき者たるかを見極める為の決闘を進言する也。」

「け、決闘って、僕とシャライさんで模擬戦をやるって事ですか?」
「否。それではパイロットの技量のみの差しか見えては来ぬ。アウローラにそれぞれが乗り、われが御相手いたそう。
老師の御言葉によるなれば、アウローラは接近戦に強い事となる。なれば、同じく拳の間合いを得意とするわれが相手をすれば、多少は公平なる判断も下せようぞ。
いかがかな、老師よ。」

ブルースの提案を聞き、「ふむ〜〜」と唸るロンファンだったが、「仕方がないの」とその進言に対して首を縦に振った。

「しかし、飽くまでも判断はわしがする事とする。シャライ、ブルース、ティエン。他の者もよいな?」

老師の言葉に全員が敬礼で返す。

なにやら大変な事になっちゃったな・・・。どうしよう、姉さん。

かくして、ティエンとシャライのアウローラ適性試験が開始される事となったのであった。


***


「準備はよいか、シャライよ。」
「ああ、いいさ。ブルース。私が如何にこのアウローラに相応しいか、貴様に眼に物見せてくれるぞ!!」

シャライの搭乗した”東アジアガンダム”アウローラに相対しているのは、ブルースの白色のワイルドダガーだ。
その体には、あたかも迸る黒炎の如き紋様が各部にペイントされており、正に”白虎”の名に相応しい。

試験の場所に選ばれたその屋外のMS模擬演習場は、赤土と礫石のゴロゴロとした荒野のような大地だった。
人造の切り立った模擬岩山が並び、一部模擬河川等も流れる陸戦演習場だ。
今回はトラップ回避訓練のための模擬地雷等は一切起動しないようになっており、機動フェンスを張ってエリアの範囲を少しだけ狭めた仕様になっていた。

文字通り、荒野での格闘決戦の為に誂えた模擬戦場である。

「アウローラのオペレーターは僕が務めます。宜しくお願いしますね、シャライさん。」
「フン、アロイスか。私はアムルの方がよかったが、まぁ仕方がない。精々私の足を引っ張らないよう気を付けろよ。」

「それじゃあ、模擬戦の合図は、私がやりま〜すっ。
・・・特別項適用模擬戦闘訓練・データ入力固有コードC-0118、開始して下さいっ!!!」

「行くぞ、俗物!!!受けてみるがいい、我が華麗なる技を!!」

アムルの開始の声と同時に先手を取ったのは、シャライの放ったビームライフルだった。
アウローラの左腕のシールドから放たれたその数筋の光線は、寸分の狂いもなくブルースのワイルドダガーへと伸びてゆく。
しかし、着弾した時には既にその場所にはワイルドダガーの姿はなかった。

「ふむ。的確な狙撃也。だが、我を捕らえるには値せぬ。もう少し、先を読むがいい!」

四足獣型に変形したワイルドダガーは正に獣の如き疾走で放たれるビームの雨を軽々とかわし、あっという間にその間合いを詰めた。
シャライはビームを放ち続けながらも、押されるように後ずさりする。

「シャライさん、下がってはブルースさんの思う壺です。ここは前へ出なくては!その機体はランチャーウィンダムではないんですよ。」
「五月蝿い!!俗物が私に指図をするな、無礼者!!」

オペレーターであるアロイスの助言についカッとなったシャライはき捨てるようにそう言うと、取って置きの狙撃の狙いをつけるための間合いを一気に取ろうとする。
後部に跳躍しようとしてアウローラが若干その腰を落した、その時だった。

MA形態のワイルドダガーの頭部バルカンが火を吹き、重心のかかったアウローラの右足に集中砲火を浴びせかける。
模擬戦用のペイント弾ではあるが、被弾を確認した模擬戦専用の機体OSが反応し、アウローラの右足の駆動を若干狂わせて、アウローラはその体勢が大きく崩されてしまった。

「し、しまっ・・・!」
「時、既に遅し!!」

跳躍しながらMS形態に変形したワイルドダガーが、アウローラのコクピットに向けて赤熱しながら輝く右拳を放つ。
ザムザザーの高周波クロウの技術を応用し、ブルースのために特別にカスタマイズされた専用の高周波マニュピレーター”シャイニングフィスト”だ。

その文字通り”燃える拳”はコクピットを貫く直前でピタリと寸止めされた。
勝負ありだ。

「はいっ、そこまで〜!!ブルース君の勝ち〜。」

残心ざんしんするワイルドダガー。

まさに、拳法とMS兵器の融合した華麗なる美技だ。
シャライは目の前で瞬時に味わされたその敗北に、暫くの間気付けないほどであった。
そんな様子を気にしてか、アロイスがそっと声をかける。

「あの、シャライさん。お疲れさまでした。その・・・なんというか。」
「う、五月蝿い!!貴様が余計な事を言うからだ、この俗物が!!こんなのは納得がいかない!ブルース!!もう一度・・・」
「いい加減にせい、シャライ。お前さんの実技は終了じゃ。さっさとティエンと変わらんか。
ええか?どちらにせよ、”格闘間合い”でお前さん達が”獣拳”のブルースに勝てるなどとは、わしは毛ほども思っとらせんわ。
勝つまでやるつもりなら、この実技試験が終了した後好きなだけやるとええ。のぅ、ブルース。」

修行の虫であるブルースは「御意」と嬉しそうに返答する。
シャライはそれ以上は何も言う事なく、悔しそうにコクピットを降りた。

「・・・シャライさん。」

代わりにアウローラに乗り込んだティエンは、モニターの端にそのシャライの姿を捉えて少しだけ気にかける。
そんなにもこのアウローラに乗りたかったのか・・・。
そんなティエンの様子を察してか、アロイスからの通信が入った。

「ティエン。シャライさんはシャライさん。君は君だ。人の事を気にしている余裕なんてないはずだよ。
少なくとも、君はシャライさんと違って模擬戦でも一度もブルースさんには勝てていないんだ。
気を引き締めてかからないと、同じように瞬殺されるのが目に見えている。」

「ア、アロイス・・・。はっきり言うなぁ。でも、確かにその通りだね。
・・・僕だって未熟だとしてもこの”ガンダム”に乗りたいんだ。このチャンス、絶対無駄にしたくないよ!」

バチン!

ティエンは絶望的な技量差を気迫で埋めんと自分の両頬を掌でおもいきり張って気合を入れる。
そんなティエンの打算なき純粋で前向きな姿勢を見て、アロイスは少しだけ羨ましく思った。

「フフ、君ならそう言うと思っていたよ。大丈夫。僕が付いているんだ。そうむざむざとやらせはしないよ、ティエン!」
「心強いよ、アロイス。行くよ!」

2人の若き挑戦者を抱いた東アジアの誇る”ガンダム”が、孤高の拳士の駆るワイルドダガーを睨みつける。

「それじゃあ、第二戦、いくよ?・・・特別項適用模擬戦闘訓練・データ入力固有コードC-0119、開始っ!!!」

アムルの開始の合図を聞くや否や、なんと、アウローラがワイルドダガーに目掛けてバーニアを全開にして加速した。

「!・・・速い!」

流石は従来のMSフレームを完全に見直して開発された新型の小型フレーム。その恩恵を受けたバーニアの加速性能は、想像していたものを遥かに凌駕していた。
正しくアウローラは「あっ」と言う間にワイルドダガーの格闘間合いに潜り込む。

「いやぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

ティエンはシールドからビームチェインソード”シィサンジン”を抜き放ち、気合一閃、ワイルドダガーの脳天目掛けて思い切り振り下ろした。 
予想外の出来事とその驚異的な加速性能に一瞬気をとられたブルースの反応が若干遅れる。

しかし、その大振りな斬撃を左肩を引いて半身を捻るように”ゆらり”と紙一重でかわしたブルースは、ワイルドダガーの”シャイニングフィスト”をカウンタージャブでアウローラの右顔面に向けて繰り出していた。
ティエンは何とかそれをシールドで受け止める。

両機に激しい衝撃が響き渡り、火花を散らせる。

「うわっ!?か・・・かわされた!!」
「いや、いいんだティエン。うまいぞ!ブルースさんは明らかに動揺したはずだ。これがアウローラの性能。それを最大限に引き出せば、足りない操縦技術だってカバーできるはずだ!!」
「・・・・。ズバズバとはっきり言ってくれるなぁ、アロイス。でも、わかった気がするよっ・・・!!」

ティエンはシールドでワイルドダガーの赤熱した右拳を受け止めたまま、再びバーニアを全開にしてそのまま押し切ろうとする。

「むぅ・・・。小さき姿なれど、中々どうして。素晴らしき出力也。いかんな。」

明らかにワイルドダガーよりも小型のアウローラであったが、そのあまりのパワーにワイルドダガーのか細い両足では支えきれず、バランスを崩しそうになる。
すんでのところでブルースはそのまま後方に跳躍し、その勢いを利用してバック転をしながら巴投げの要領でアウローラを蹴り飛ばした。

再び間合いを取る2機。
しかし、ティエンは休む事なく果敢にもワイルドダガー目掛けて一直線に加速する事を繰り返す。

「そうだ、ティエン。それでいいんだ!ブルースさんを休ませずに前へ、前へ!!」

どうやらティエンはアウローラの性能を引き出すというアロイスの言葉を自分なりに解釈し、実行しているようだった。

即ち、その加速性能と格闘武装を使った息の着く間も与えない連続格闘。

一見、猪突猛進で無謀にも見えるこの戦闘スタイルだが、零距離での乱戦に持ち込む事で相手の技量を相殺し、なるべく手の内を読まれる前に短期決戦を図るという心算なのだろう。

そのティエンの読みは当たっていた。
あまりに密着されすぎる事で、ブルースの得意とする華麗なる演舞の攻防もそのヴァリエーションが削られる。
しかも、それがわかっていても休みなく密着される事と、MSの加速性能の差から間合いを測りにくくなる。

正に密着状態でお互いの剣が、拳が、自動機銃がビームバルカンが嵐の如く飛び交っていた。
勿論ティエンに交わしきれるはずもなく、アウローラにも無数のダメージが蓄積されていったが、ブルースのワイルドダガーとて被弾がないわけではない。

これだけでも、ティエンにとってはかなりの戦果であった。
アムル達は、そんな激しい攻防を見て呆気にとられていた。

「す・・・すっご〜〜〜い。」
「あやつ等、機体を壊す気か?本気でガツガツ殴り合いおって。実に小気味いいわい。ほっほっほ。」


「楽しきかな、ティエンよ。アウローラの性能があるとは言え、よもやお主がここまでやるとは思いもよらず。去れど・・・!!」

大きく身をかがめるようにしてアウローラの胸部ビームバルカンをかわしたワイルドダガーが、そのまま四足獣形態に変形する。

「児戯は終わり也!!」

今までの動きとは全く違った獣の如きステップでブルースは華麗にアウローラの周囲を舞い始めた。

先読みして特攻を掛けようとするティエンだが、その突撃は悉く空回りし始める。

「”獣拳じゅうけん餓狼包囲がろうほうい”・・・!!獲物を狙う獣の如き我が動き、捉えきれまい。さあ、狩りの始まり也。」

「くそっ、急に速くなった!?どこだっ!!」
「円の動きで、線を包む・・・。
直線的加速性能の差を、ステップを使って四方を自在に動きまわる事で相殺したというのか・・・。流石はブルースさん。
でも、焦るな、ティエン!ブルースさんは必ずこちらに飛び込んでくる。今度はそこを狙うんだ!」

アロイスのアドバイスが終わるよりもそれは早かった。
四足獣型の餓えたる狼が、ティエンの死角から獲物を狙う獣の如く襲い掛かる。
そして、腰部に展開されたの模擬戦用のライトビームサーベルでアウローラの左腕を凪ぎ、OSがそれを感知してアウローラの左腕は機動不全となってしまった。
これでは、シールドが使えない。


「フン、所詮はヤツの力ではブルースの自力には及びはしない・・・。そうさ、無様な俗物め。」

自分の醜態を調消ししたい一心だったのだろう。
シャライは「そら見た事か」と一人嬉々としてティエンのその苦戦を観戦していた。


シャライのそんな思いを反映するかのように、ブルースはティエンに勧告する。

「見えもせずかわす事も出来ぬなら、盾を失っすれば我が致命撃を防ぐ道理なし。終局也、ティエン。」
「っくっ!!!」

ブルースの言葉の通り、最早ワイルドダガーのその動きはティエンでは捉え切れなかった。
微動だにできないままに機体に駆動不全のダメージが蓄積していき、アウローラがついにその片膝を大地についた・・・その時だった。

ワイルドダガーは狙い済ましたようにアウローラの背後から襲いかかり、空中でMS形態に高速変形する。
そして、そのままトドメだと言わんばかりに渾身の力を込めて”シャイニングフィスト”を繰り出した。

ズガァ!!!!

激しい激突音と共に、砕け散る・・・”バイザーアイ”。

なんと、ワイルドダガーの拳が当たるよりも早く、背中を見せたままのアウローラが繰り出したビームチェインソード”シィサンジン”がワイルドダガーの顔面に突き刺さっていたのだった。
その攻撃の成功に、真っ先に驚きの声をあげたのはティエンの方だ。

「あ、当たった!!!!?」
「な・・・なんと!?お主、どうして我が”獣拳”の運歩を見抜いた!?」

糸のように細い瞳を最大限に大きく見開いたブルースが、ティエンに向かって問う。
当然の疑問である。今まで攻撃を掠らせる事すらさせなかった満身相違の相手に、いきなりクリーンヒットをもらったのだから。
ティエンは呼吸を整えながらブルースに答える。

「と、捉えきらないなら、トドメを刺しにくる所を狙うしかないって思ったんですよ。
アウローラの機体正面にはビームバルカンがあるし、襲ってくるなら背後からだとヤマを張ったんです。
だから、” わざと片膝を崩して”アウローラに隙をつくって、そのタイミングで破れかぶれで後ろに剣を突き出したんですよ。
後ろを気にするモーションを入れてしまったら、それこそブルースさんに警戒されてしまうと思ったから・・・」

その場にいる全員が、予想外の事態に開口状態のまま硬直していた。
あの”魁龍クワイロン”の中で実質最強の実力を持つブルースに大きなダメージを与える一撃を、あの新米のティエンが成功させるとは・・・。
そして、心底感嘆していたのは攻撃を受けたブルース本人であった。

「愉快・・・愉快也、黎天ライ・ティエン!!これほどに楽しき闘いは久しい・・・。よかろう、克目せよ。お主に・・・いや、

・・・テメェに見せてやる。この俺の・・・”真なる獣拳”をなッ!!!

フゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・。」

獣が威嚇する時のような奇声を発するブルースの体から、禍々しい殺気が放たれ始める。
それを見たアロイスがとっさに叫び声をあげた。

「ま、まずい!!ティエン、離れて!!!老師!!!実技終了の合図を早く!!!」
「ブルースさんの・・・口調が・・・!?ア、アロイス?え、え、一体何なんだ???」
「そ、そこまでじゃ!ブルース!!演習は終了じゃ!やめい!!」

ロンファンの制止の声にピクリと反応したブルースは、ひとつ深く深く息を吐き、「御意」とティエンに向かって残心して演武修了の合掌をした。

「ふ〜〜・・・”どうやら間に合った”ようだ。よかった。」
「間に・・・あった??一体、何だったんだろう、今の?」

アロイスの言葉にティエンは疑問を感じながらも、アウローラのコクピットから降りて隊員の下へと合流する。
額からは滝のように大粒の汗が流れ落ちていた。

「ティエン君、すごいっ。すっごいよ〜〜〜!!!おつかれ〜っ。」

タオルを持って歩み寄るアムルだったが、ティエンは警戒してそれを受け取るのを戸惑う。
しかし、「やだなぁ、何にもとらないよ。すごかったし」というアムルの言葉を信じて、そのタオルでティエンは自分の汗を拭った。

ちなみに、同じくタオルを渡したブルースからはちゃんと請求するつもりのようだったが・・・。
どうやら、アムルの請求は一人につき一日一回までと本人が決めているらしい。

お金を取られる心配もなくなり汗を一心不乱に拭うティエンの頭を、何者かが硬いものでコツリとこずく。
振り返ると、そこに立っていたのは木製の杖を手に持った老師、ロンファンであった。

慌てて敬礼するティエンに、ロンファンは叱咤する。

「この大バカモンが。演習なのに機体を壊してどうする。あの”猫人間”のバイザーを直すのは誰じゃと思うとるんじゃ?わしの仕事を増やすでないわ。」

「すみません!」と今気付いたかのように何度も頭を下げるティエンを見つめるロンファンの表情は、言葉とは裏腹にどこか嬉しそうだ。
よもやこの新米小僧が短期間でここまで成長しているとは思いもよらなかったからであろう。
つくづく若さと言うものには驚かされるものだ。

「まあ、ええ。それが仕事じゃからの。とにかく、当初の決定通り、”東アジアガンダム”はお前さんに預ける。大事に使うんじゃぞ?あればっかりは壊したらクビが飛ぶだけじゃすまんからな。
なにしろ、東アジアの威信がかかっておるのじゃから。
皆も異論はないの?」

ロンファンの言葉に、異論を挟むものは一人もいなかった。
ブルースは当然であると無言で頷き、アムルも祝福の拍手をティエンに送る。
あのシャライでさえも、腕組みしたまま無言でそっぽを向いていた。

「おめでとう、ティエン。アウローラは・・・君のものだ。」

キョトンとしたままのティエンは、アロイスのその言葉を聞いて漸く自分が為しえた事への実感が沸いてきた。
抑えきれないほどの喜びが、体の中を駆け巡る。

「やった・・・やったよぉ、姉さん!!!」

人目も憚らず飛び跳ねる無邪気なその少年に東アジアの威信アウローラが託されたのかと思うと、少しだけ不安な気持ちになるような気もしないでもなかったが・・・。

こうして、ティエンとアムルはそれぞれフジヤマ社と東アジア共和国の威信をかけた大作、”東アジアガンダム”アウローラとドグーを受領し、正式なテストパイロットとして登録される事となったのであった。

これも、これから訪れる”不穏なる闇夜”の前哨であるという事を、この時のティエン達はまだ知る由もない・・・。


≪PHASE-03へ続く≫