Prologue Mercy Rain


次第に冷たくなっていく彼女の身体を抱いたまま、僕は唯、灰色の空を見つめるばかり。


降りしきる雨の中、僕は自分の命の灯火が消え行く事を受け入れる事を決めた。


不思議と恐怖は無い。

だって、この雨は慈愛の雫。

僕らの穢れた血と過去の罪たちを洗い流し、輪廻の光を映し出す永遠の雨。



もしも次に生まれ変わるなら、今度はこの娘と片時も離れずに寄り添って行こう。

そう考えればこれまでの現世での生は、最早意味を成さない気さえした。



死して初めて結ばれるロミオとジュリエット。

ならば死は再生への前奏曲。



一緒に逝こう。

そしてこの先を永劫に二人で生きよう。



僕は酷く蒼冷めた彼女の唇に、そっと自らの唇を重ねた。




浄化の雨が僕らの身体を優しく包み込み、鎮魂曲レクイエムを奏で続ける。

これは祝福だ。


ならば黙って運命を受け入れよう。



死が二人を別つのではない。

これは全ての始まりなのだから。



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